【7月28日 AFP】地中海に面したフランス南部ラ・セーヌ・シュル・メール(La Seyne-sur-Mer)に近いトゥーロン(Toulon)港沖で25日から、人工知能を利用した自律型潜水ロボットのテストが行われている。  

 互いにコミュニケーションを取る複数の潜水ロボットたちは、水上船から海中に下ろされ、ビデオカメラと音響測深器を使って海底の地形を調査する。海底の3D地図ができれば、海洋学者や考古学者、沖合の石油・ガス採掘業者、公害監視機関、海洋生物学者などの民生目的だけでなく、軍事的にも有用なものになるはずだ。

 世界有数の海洋研究機関、フランス海洋開発研究所(French Institute for Research for Exploitation of the SeaIfremer)のバンサン・リゴー(Vincent Rigaud)氏は、潜水ロボット自体は新しいものではないものの、「自律型水中無人探査機の船隊」を作ろうとしている点が画期的だと語る。

 2012年2月に始まったこの水中無人探査機の開発計画「MORPH」(Marine Robotic System of Self-Organising, Logically Linked Physical Nodes、自己組織的で論理的に接続された物理ノードの海洋ロボットシステム)は、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガルの欧州5か国が400万ユーロ(約5億2000万円)の予算を費やし、4年の予定で実施しているもので、欧州委員会(European Commission)も協力している。

■2つの技術的ハードル

 計画には32人の科学者が参加して、新たな海底探査方法として互いに通信しながら自律的に機能するロボットシステムの確立を目指している。このためには2つの大きな技術的ハードルがある。1つはソフトウェアの開発だ。潮流など不確実性のある海洋環境の中で複数のロボットが協調して行動できるようにする人工知能が必要だ。

 もう1つは通信だ。水中では電波が使えないためロボット間の通信には音波を使わざるを得ないが、これは容易ではないことが実験するなかで明らかになった。音波による通信は通信速度が非常に遅い上、船舶などが出す雑音に妨害されやすい。通信速度は最大でも一般的なADSLの10万分の1程度で、1枚の写真を送るのに数分かかるという。

 まだ最大5台のロボットが浅い深度で整列して移動する方法を学習している初期的な段階だが、将来的にはロボットたちは避けるべき障害物の位置を示す大まかな海底地形情報を共有してミッションに臨み、各ロボットは海中で一定のパラメーターの範囲で自律的に行動するようになるだろう。観測したデータは各ロボットに搭載された記憶装置に記録され、ロボットが回収された後にダウンロードして強力なコンピューターで加工した上で利用に供されるようになるだろう。(c)AFP/Thibault Le Grand