【7月26日 AFP】米政界の代名詞ともいえる名門一家の末裔として生まれながら、長らく民間にあってごく控えめな立場に徹してきたキャロライン・ケネディ(Caroline Kennedy)氏(55)が、満を持して大舞台に上がろうとしている。

 24日に次期駐日米大使への指名を受けたケネディ氏は、暗殺された故ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)元米大統領の子どものうち、唯一存命している人物だ。米国の外交政策の中でアジアの重要性がかつてなく高まる中で、東京にある駐日大使公邸を引き継ぐことになった。

 米国が重視しているのは、好戦的な姿勢を再び強めている北朝鮮と、米国の対抗勢力として台頭しつつある中国、そしてこれまで同様に緊密な同盟関係を維持したい日本だ。

■オバマ大統領との絆

 とはいえ、ケネディ氏自身は、親しくしているバラク・オバマ(Barack Obama)大統領から華々しい外交職に指名されたことには特に驚かなかったかもしれない。なぜなら、祖父の故ジョセフ・ケネディ(Joseph Kennedy)氏も第2次世界大戦直前に、フランクリン・ルーズベルト(Franklin D. Roosevelt)大統領(当時)から駐英米大使という難しい役回りを任されていたからだ。

 またケネディ氏には、オバマ大統領との強い絆もある。2008年の米大統領選挙で、当時どちらかといえば無名だったオバマ氏が常に優勢だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏と民主党候補指名を争っていた際、オバマ氏の知名度を一気に押し上げたのがケネディ氏だった。

 米紙ニューヨークタイムズ(New York Times)への「私の父に似た大統領(A President Like My Father)」と題した寄稿でケネディ氏は、これまで父の故ジョン・F・ケネディ氏と肩を並べるような大統領は1人もいなかったと述べた上で「そんな大統領になれる人物についに出会った」とオバマ氏を紹介したのだ。

■「愛らしい少女」、外交手腕は未知数

 ケネディ氏が高位の外交官として適材なのかという疑問は今後、必然的に出てくるだろう。しかし、政治的な意味合いから大使を指名するのは民主、共和いずれの大統領の場合にも決して珍しい話ではない。

 一方で、ケネディ氏の準備がどれくらい整っているかを測るのは難しい。資産家で、弁護士資格を取得しているものの実際に業務に携わったことはないとされる。複数の書籍を執筆しているが、セレブとしてスポットライトを浴びたことはない。また、ニューヨーク(New York)の高級住宅地パーク・アベニュー(Park Avenue)に住みつつ地下鉄を利用し、報道の目に触れない形で慈善事業や公教育への支援を行っている。

 確かに、多くの米国民がケネディ氏について、時が止まったような感覚を持っていたとしても不思議はない。ホワイトハウス(White House)の周りでポニーに乗っている姿や、1963年にアーリントン国立墓地(Arlington National Cemetery)で父親の葬儀に参列した悲劇的な姿は写真に残っており、永遠に愛らしい少女というイメージが焼きついているからだ。

■政治家より外交官向き?

 ケネディ氏は一度だけ、2008年後半~2009年初頭に、クリントン氏がオバマ大統領の1期目の国務長官に就任して空席となったニューヨーク州上院議員の補欠選挙への出馬をちらつかせたことがある。しかしこのときは、マスコミや他候補がケネディ氏について準備不足と指摘したり、インタビューで一貫した話すらできないと揶揄(やゆ)したため、屈辱的な出馬撤回を余儀なくされた。

 ケネディ氏には、政治家より外交官の方が向いているかもしれない。

 ケネディ氏の上司となるジョン・ケリー(John Kerry)国務長官がニューイングランド(New England)地方の名門一族の出身で、ケネディ氏の叔父に当たる故エドワード・ケネディ(Edward Kennedy)元上院議員と親しかったという事実も、ケネディ氏に有利に働くだろう。(c)AFP/Sebastian SMITH