【7月25日 AFP】チリのアタカマ(Atacama)砂漠にあるアルマ(ALMA)電波望遠鏡がとらえた1150万光年離れた銀河の画像により、銀河での星形成の速度が異様に遅い理由を説明できるかもしれないとの論文が24日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 宇宙には驚異的な速度で星を作り出している銀河が数多くあるのに、なぜ質量の大きな銀河がほとんどないのかという疑問は、宇宙物理学者らを長年、悩ませてきた。中には、銀河系の100倍の速さで星を形成している銀河もある。理論上、これらの「スターバースト銀河」は超巨大になっているべきだ。

 天文学者らは地球上で最も強力な電波望遠鏡、チリのアルマ電波望遠鏡を使い、星形成の材料となる水素などで構成されるガス雲がスターバースト銀河「NGC 253」から放出される様子を観測するのに成功した。

「NGC 253」は1783年に発見されたスターバースト銀河で、ちょうこくしつ座(Sculptor)の方向1150万光年の距離にある。丸く輝く姿から、「Silver Coin Galaxy(銀貨銀河)」とも呼ばれる。

 だがその名前とは裏腹に、地球から見ると実際には少し傾いており、それが中心部付近の大量の星の集まりを観測しやすくしている。ここで星が形成されるとともに、大量のガスが放出されているという。

 米メリーランド大学カレッジパーク校(University of Maryland in College Park)のアルベルト・ボラット氏(Alberto Bolatto)は、「若い星が作り出す強大な圧力の膨張殻から、大量の高濃度で冷たい分子ガスが排出されるのを初めてはっきりと観測できた」と話す。分子ガスの量を計測した結果、一部の成長中の銀河では、流入量より排出量の方が大きい確たる証拠が得られたという。それが星形成の速度を弱めているのだという。

 大質量銀河がほとんどないことを説明する主な説として、銀河の中心にある超大質量ブラックホールが分子ガスをのみ込んでいるというものがあるが、「NGC 253」の中心のブラックホールが現在活動中であることを示唆する材料はないという。(c)AFP