【7月24日 AFP】高濃度のヒ素で汚染されたコメは、がんのリスクを高める遺伝子損傷と関連性があるという研究論文が22日、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された。

 飲料水に含まれる自然由来のヒ素による健康被害は以前から知られており、特に数千万人の人々が1970年代に掘られた井戸に依存しているバングラデシュでは、長い間問題になっている。科学者らは、汚染された地下水で栽培されたコメに関しても懸念を抱いてきたが、リスクの証拠が発見されたのは今回が初めてだ。

 英マンチェスター大学(University of Manchester)とインド・コルカタ(Kolkata)にあるインド化学生物学研究所(Indian Institute of Chemical Biology)の研究チームは、インド・西ベンガル(West Bengal)州の村民417人の協力を得て調査を実施した。

 研究チームは村民に各自の生活スタイルに関する詳細な情報と1日に食べるコメの量を報告させ、尿と調理済みのコメのサンプルを提出させた。村民は、3つの異なる地域から参加したが、食生活と社会・経済的地位は同等だった。また、飲料水によるヒ素汚染の程度は低かった。

 研究チームは、尿のサンプルから尿路内壁の細胞を抽出して分析し、「小核(しょうかく)」と呼ばれる遺伝的特徴の有無を調べた。小核は、細胞が複製される際に、遺伝情報が正しく複製されなかった場合に残されるDNAの小さなかけらだ。

 細胞で遺伝情報が正しく複製されない頻度が高いほど、それらががん化するリスクが高くなることが、これまでの研究で明らかになっている。そのため、小核の増加は、がん化リスクの指標になる。

 調査の結果、コメに含まれるヒ素の濃度が高いほど、小核の出現頻度が高くなることが明らかになった。この傾向は、男性と女性、喫煙者と非喫煙者の両方に共通して見られた。村民らは、平均して1日に約500グラムのコメを食べていた。1キログラム当たり200マイクログラム以上のヒ素を含む調理済みコメを食べている場合に、小核の出現頻度が高くなる傾向が見られ始めた。

 村民の健康問題の監視は、今回の論文の範囲に含まれていない。だが今回の結果は、高濃度のヒ素が含まれる水域で栽培されたコメを毎日大量に消費している人々にとっての警鐘になるだろうと論文は述べている。世界では、数億人の規模になるかもしれないと論文は指摘する。

 論文によると、中国、バングラデシュ、日本、パキスタン、欧州、米国などで栽培されるコメには、1キロ当たり200マイクログラム以上のヒ素を含むコメが有意な割合で含まれることがわかったという。「今回の研究によって、人間の健康への脅威に関する重大な懸念が提起された」と論文は警告している。(c)AFP/Richard INGHAM