【7月24日 AFP】人間の脳が情報を処理する方法を模倣するマイクロチップを開発したとする研究論文が22日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。これにより、「世界で最も効率的なコンピューター」がどのように機能しているかに関する謎の一部が解明されるという。

 スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)は22日夜、同大とスイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)の科学者らが、独米の研究者らと共同で、大きさ、処理速度、エネルギー消費量のすべてが人間の脳と同程度の電子システムを開発したとの声明を発表した。研究チームが開発した「ニューロモーフィック・チップ」は、人間の脳と同様に、リアルタイムで情報を処理して対応できるという。

 これまでの電子システムは、日光が当たると自動的に閉じるブラインドのように、周囲の環境に反応するように設計されていた。今回のプロジェクトに関わった研究者の1人、チューリヒ大学のジャコモ・インディベリ(Giacomo Indiveri)教授(神経情報科学)によると、研究チームは、ニューロモーフィック・チップを人工のニューロン(神経細胞)として使用して、記憶、意思決定、分析を短時間で行う能力が必要とされるタスクを実行できるネットワークを構築したという。

 この技術は、時を経てロボットが「環境内で自立的に走行し、人による遠隔操作がなくても機能し続ける」ことを可能にし、有用なツールになる可能性があるとインディベリ教授は話す。またこのチップは、スマートフォン(多機能携帯電話)をさらにスマート(利口)にするのを助けるかもしれないという。

 人間の脳が毎日100万個の神経細胞が失われても衰えずに活発に活動し続けるのと同様に、このチップによって、部分的に障害が発生している状態でも正常に機能できるコンピューターを開発する道がいつか開けるかもしれない。(c)AFP