【7月22日 AFP】絶滅危惧種のスペインオオヤマネコは、たとえ世界が温室効果ガス排出量の削減目標を達成できたとしても、気候変動の影響で50年以内に絶滅する――。こんな研究が、21日の英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)に発表された。自然保護政策の劇的な転換が必要だと指摘している。

 スペインオオヤマネコ(学名:Lynx pardinus)は体長およそ1メートル、体重は最大で15キログラムまで成長するネコ科の動物で、ぶち模様のついた薄茶色の毛皮と淡黄色の瞳を持ち、耳と頬の毛が長いのが特徴。

 野生の生息数は250匹余りで、スペイン南部のシエラ・モレナ(Sierra Morena)山脈とドニャーナ国立公園(Donana National Park)の2地域にのみ、まとまって生息している。餌とする野生のウサギの駆除が進んだことや、密猟、生息地が開発で分断されたことなどにより、生息域は過去50年で4万600平方キロメートルから1200平方キロにまで減少した。

 スペイン・マドリード(Madrid)の国立自然科学博物館(National Museum of Natural Sciences)のミゲル・アラウジョ(Miguel Araujo)氏率いる研究チームは今回、気温上昇と降雨パターンの変化が生息地とオオヤマネコ、ウサギのそれぞれに及ぼす影響をモデル化した。すると、現在の傾向が続けば、オオヤマネコの適応能力を上回る速度で変化が起きるとの見通しが示された。

 研究チームは、「人為的な温室効果ガス排出量を急速かつ大幅に減らしたとしても、絶滅は50年以内」と予測している。

 ただし、希望がないわけではない。研究チームによれば、自然保護政策の全面的な見直しを行えば、少なくとも数十年間は絶滅を回避することが可能だという。

 現在の保護政策は、オオヤマネコのかつての生息地であるスペイン西部と中部、ポルトガル東部にまたがる広大な地域に毎年、飼育したオオヤマネコ20~40匹を放すというものだ。だが研究チームは、広域に放すのをやめ、寸断されておらず気候変動にも最も耐え得る、最も生息環境の整った地域を選んで放すべきだと指摘する。

 コンピューターモデルの結果によると、この方法で毎年1~4歳の雄と雌各6匹を野生に帰すことで「今世紀中のスペインオオヤマネコの絶滅を回避することが可能になる」という。(c)AFP