【7月21日 AFP】イングランド・プレミアリーグ、アーセナル(Arsenal)のアジア遠征での来日は、チームを率いるアーセン・ベンゲル(Arsene Wenger)監督にとっては、かつて自身が率い、現在は教え子が指揮するチームと対戦するという、記憶をたどる旅でもある。

 ベンゲル監督率いるアーセナルは22日、Jリーグ1部(J1)の名古屋グランパス(Nagoya Grampus)と対戦する。グランパスはかつて、アーセナルの指揮官就任前のベンゲル監督が、1995年から18か月にわたって指揮したチームで、現在は旧ユーゴスラビア代表の元主将ドラガン・ストイコヴィッチ(Dragan Stojkovic)監督が率いている。

 この試合はベンゲル監督にとって、かつて成功を収めたグランパスへの退任後初の凱旋となる。さらに英メディアが、ベンゲル監督のアーセナル退任の際には、ストイコビッチ監督が後を継ぐとかねてから報じていることも、この試合を興味深いものにしている。

 ベンゲル監督は、豊田スタジアム(Toyota Stadium)で行わる試合に先立ったグランパスとの共同記者会見で、「ともに仕事をした人間が、監督になるのはいいものだ」とコメントした。

「何より、私が少なくとも影響を与えたかもしれませんし、この仕事への嫌悪感を与えずにすんだということかもしれませんから」

 63歳のベンゲル監督は、ストイコビッチ監督が自身の後任候補になる可能性があるかとの問いに「イエス」と返答している。

 しかしながらすぐさま監督は、まだ引退の心づもりはなく、また後任を判断するのはアーセナルの理事会の役割だと言い添えた。

 これに対し、48歳のストイコビッチ監督は「あと10年は待ってください」と冗談で返した。

 ストイコビッチ監督は、プレミアリーグの強豪アーセナルが披露するサッカーの熱烈な信奉者であり、毎年のように英ロンドン(London)を訪れて、トレーニングを見学しているという。

 ストイコビッチ監督はアーセナルについて「すごく大好きなチーム。プレーやチームスタイル、チームの精神が大好きなんだ」とコメントしている。

 ベンゲル監督は、グランパスの指揮官就任1年目となる1995年シーズン、第75回天皇杯(The 75th Emperor's Cup)を制してクラブにタイトルをもたらし、同シーズンのJリーグ最優秀監督賞を受賞した。

 1996年シーズンにグランパスは、最近までクラブの過去最高成績だったリーグ2位に躍進。2010年には、ストイコビッチ監督の下でクラブ初となるJリーグ優勝を達成した。

 グランパスの選手として2001年までプレーし、その後2008年に指揮官としてクラブに戻ったストイコビッチ監督は、「私にとっては、選手として忘れられない時期だったし、本当に楽しかった」と語り、当時を振り返った。

 ピクシーのニックネームで親しまれるストイコビッチ監督は、「全力を尽くし、才能のすべてを捧げた。ベンゲルはベンチの監督で、私はピッチ上の監督。いいコンビだった」とコメントした。

「こうして17年ぶりにこの場所でベンゲルと再会できて、ここにいるみんながすごく特別な気持ちを抱いている」

 アーセナルのトップチームが日本で試合を行うのは、45年ぶり。1968年5月、アーセナルはシーズン終わりの遠征で日本を訪れ、日本代表から3勝を収めるなど全4試合を戦った。

 グランパス戦後にアーセナルは、26日に埼玉スタジアム2002(Saitama Stadium 2002)で、2007年のAFCチャンピオンズリーグ(AFC Champions League 2007)覇者である浦和レッドダイヤモンズ(Urawa Red Diamonds)とアジア遠征最終戦を行う。(c)AFP/Shigemi SATO