【7月16日 AFP】陸上短距離界の過去をさかのぼると、ベン・ジョンソン(Ben Johnson)、マリオン・ジョーンズ(Marion Jones)ら往年の名選手を含めて、数々の実力者がドーピングスキャンダルを引き起こしている。

 14日には、タイソン・ゲイ(Tyson Gay、米国)とアサファ・パウエル(Asafa Powell、ジャマイカ)という世界歴代4位以内のタイムを持つ選手のうち2人が薬物検査で陽性反応を示したことが明らかとなり、その名誉がまたしても傷つけられた。

 ここでは、短距離界で起きた不名誉なドーピング問題を振り返る(薬物使用の発覚した五輪、あるいは年の順)。

■ソウル五輪、ベン・ジョンソン

 カナダのベン・ジョンソンは1988年のソウル五輪、男子100メートル決勝で世界記録となる9秒79を記録して優勝を飾ったが、その数日後にアナボリック・ステロイド(anabolic steroid)、スタノゾロール(stanozolol)といったステロイド剤の使用による陽性反応が出た。当時としては五輪史上最大のドーピングスキャンダルとなり、ジョンソンは2年間の出場停止処分を命じられた。さらに、1993年に新たなドーピング違反が発覚すると、永久追放処分を受けた。

■1999年、元五輪王者クリスティ

 当時32歳で出場した1992年バルセロナ五輪の男子100メートルで同種目史上最年長の金メダリストに輝いた英国のリンフォード・クリスティ(Linford Christie)は、1999年に筋肉増強作用を持つナンドロロン(nandrolone)の陽性反応が検出され、2年間の出場停止処分を受けた。

■2003年、女子短距離2冠ホワイト

 第9回世界陸上パリ大会(9th IAAF World Championships in Athletics Paris)の女子100メートル、200メートルで2冠を達成した米国ケリー・ホワイト(Kelli White)が禁止薬物の使用を認めた。

■2004年、欧州記録保持者チェンバース

 当時、男子100メートルの欧州タイ記録を保持していた英国のドウェイン・チェンバース(Dwain Chambers)は、バルコ(Bay Area Laboratory Co-operativeBALCO)社が関わったスキャンダルの一環でテトラハイドロゲストリノン(Tetrahydrogestrinone、THG)の陽性反応を示し、2年間の出場停止処分を受けた。

■アテネ五輪、地元選手が検査逃れの事故偽装

 ギリシャのコンスタンティノス・ケンテリス(Konstantinos Kenteris)とエカテリニ・タヌー(Ekaterini Thanou)は薬物検査を逃れるためにバイク事故を偽装したとして、アテネ五輪の開幕前日に失格となった。

■2005年、世界記録保持者モンゴメリー

 男子100メートルで2002年に9秒78を記録し、当時の世界記録を樹立した米国のティム・モンゴメリー(Tim Montgomery)は、バルコ社が関与したドーピングスキャンダルに関わったとしてスポーツ仲裁裁判所より2年間の出場停止処分を科せられた。

■2006年、世界タイ記録保持者ガトリン

 アテネ五輪、男子100メートルの金メダリストで2006年に当時の世界タイ記録となる9秒77を出した米国のジャスティン・ガトリン(Justin Gatlin)は、記録樹立の3週間後にテストステロン(Testosterone)の陽性反応が確認されたことを受けて4年間の出場停止処分を受けた。また、2001年にはアンフェタミン(合成覚せい剤)を使用していた過去がある。

■2007年、五輪3冠マリオン・ジョーンズ

 2000年のシドニー五輪で3つの金、2つの銅、合計5個のメダルを獲得した米国のマリオン・ジョーンズは、1999年からステロイド剤を使用していたことを認め、すべてのメダルをはく奪された。さらにバルコ社が関与したドーピングスキャンダルとの関係性を否定したことで、2008年に偽証罪により禁錮6月の実刑判決を受けた。

■2009年、ヨハン・ブレイク

 ジャマイカのヨハン・ブレイク(Yohan Blake)は、興奮剤の陽性反応が出たため、3か月の出場停止処分を言い渡された。2年後に行われた第13回世界陸上大邱大会(13th IAAF World Championships in Athletics Daegu)、男子100メートル決勝では、失格となったウサイン・ボルト(Usain Bolt)不在のレースを制して金メダルを獲得している。また、タイソン・ゲイと並んで世界歴代2位となる9秒69という記録を持つ。

■2010年、フレイザー・プライス

 2008年の北京五輪、2009年の第12回世界陸上ベルリン大会(12th IAAF World Championships in Athletics Berlin)で女子100メートルを制したジャマイカのシェリー・アン・フレイザー・プライス(Shelly-Ann Fraser-Pryce)は、鎮痛剤のオキシコドン(oxycodone)でドーピング検査に引っかかり、6か月間の出場停止処分を受けた。しかし、2年後のロンドン五輪では女子100メートルで連覇を達成している。

■2011年、マリングス

 ジャマイカのスティーブ・マリングス(Steve Mullings)からは、男子100メートルで自己ベストとなる9秒80を記録した後、ドーピングの隠蔽(いんぺい)を目的に使用されるマスキング剤が検出された。マリングスは2004年にもテストステロンで陽性反応を示して出場停止処分を受けていたため、永久追放処分を受けた。

■2013年6月、キャンベル・ブラウン

 女子200メートルで、アテネ五輪、北京五輪と連覇を達成し、世界陸上大邱大会でも優勝したジャマイカのベロニカ・キャンベル・ブラウン(Veronica Campbell-Brown)は、禁止薬物に指定されている利尿剤の陽性反応を示したとして、暫定的に出場停止処分を受けている。

■2013年7月、タイソン・ゲイとアサファ・パウエル

 米国のタイソン・ゲイが5月に提出したサンプルから禁止薬物の陽性反応が出たことが発覚。具体的な薬物の種類は公表されていない。

 ゲイのドーピング疑惑が明らかになった数時間後、男子100メートルで歴代4位の記録を持つジャマイカのアサファ・パウエルから禁止興奮剤のオキシロフリン(oxilofrine)が検出されたことがわかった。

 両選手はいずれもBサンプルの検査結果を待ってから正式な判断が下される。(c)AFP