【7月15日 AFP】アフガニスタンの首都カブール(Kabul)では、多くの地域で丁目や番地がなく、建物名や表札もない──この町の郵便配達員は、郵便物を届けるためにいつも名推理を行わなければならないのだ。

 郵便配達員のモハマド・ラヒムさん(46)は、カブールの坂道の多い街を古い自転車に乗って走り、郵便物を配達している。勤続10年、郵便物に最もあやふやな住所が書かれていても、ラヒムさんがひるむことはない。

「この手紙は、『ハシュマト医師の自宅そばに暮らす男性』宛だ。住所はわからない。さて、どうやって正しい場所を探し当てられるだろう」(モハマド・ラヒムさん)

 手がかりは、宛先のモハマド・ナイームという名前と、医師の名前、それに封筒の裏に書かれた指示、「Kart-e-Sakhiの丘の上、農務省の裏側」だけだ。

 黒い毛皮の帽子にブルージーンズ、スミレ色のTシャツ姿のラヒムさんはカブール住民の顔なじみだ。郵便局を出たラヒムさんは、まず通りの人々に助けを求めた。

「兄弟よ、教えてくれないか。ハシュマト医師の自宅はどこだい?」とラヒムさんは小売店主に向かって叫んだ。

 すると、「坂を上って右に曲がれ」と答えが返って来た。

 ラヒムさんは言われた通りにごつごつした坂道を上って行き、その先で別の男性にも道を聞いた。男性はすぐに「右に曲がって、左手の3番目の家がそうだ」と答えたくれた。

 目的の家に着いて門の外で待っていると、40代の女性が現れた。モハマド・ナイームさんの妻だった。ラヒムさんはナイーム夫人に手紙を渡した。

「米国、カナダ、ドイツ、パキスタンから手紙が届く。配達員はいつも安全に時間通りに配達してくれるわ」とナイーム夫人は語った。

 ラヒムさんはカブールの西部と南西部で毎日数十通の手紙を配達している。

■待ち望まれる住所制度

 カブールは1992~96年の内戦で廃虚同然となった。その後、タリバン(Taliban)との戦闘から避難してきた人々や雇用目的で集まった多くの人々で、市の人口は500万人まで急増した。ただ近年の移住者の大半は違法で、住宅や簡易の小屋が権利関係の争われている土地などに許可なく建設されているという。

 しかし住所の混乱もまもなく終わる。先月、通信省と市当局が新たな包括的な住所制度の導入で合意に達したためだ。

 全地球測位システム(GPS)による調査をもとに、2年計画で全ての道路や住宅に名称や番号が割り振られる。政府はこの制度を国内各地の都市に適用して行く方針で、ラヒムさんにとっても、きっと便利になるだろう。(c)AFP/Mushtaq MOJADDIDI