【7月16日 AFP】世界各地で発生した大地震が、米国内の天然ガス掘削作業の廃水を地中に注入している場所で地震を誘発しているとの研究論文が、11日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 米コロンビア大学(Columbia University)ラモントドハティ地球観測研究所(Lamont-Doherty Earth Observatory)の研究者らが発表した論文によると、例えば2011年に日本で発生したマグニチュード(M)9.0の巨大地震によって、米テキサス(Texas)州西部にあるコッジェル(Cogdell)油田そばの町スナイダー(Snyder)で地震が連続して発生し、約6か月後のM4.5の地震まで続いたという。

 同様に、2010年にチリで発生したM8.8の地震の後には、オクラホマ州プラーグ(Prague)にある操業中の注入井のそばで、小型から中型の地震が観測された。

 論文によると、チリ地震の16時間後に発生したM4.1の地震から2011年11月のM5.7の地震まで、この地域では異常な地震活動が続いたという。

 また2010年のチリ地震は、コロラド(Colorado)州トリニダード(Trinidad)で地震活動を増大させ、2011年8月のM5.3の地震などを誘発した。この地域では、炭層からメタンを抽出しており、廃水を地中に再注入している。

 論文の主執筆者、コロンビア大学のニコラス・ファン・デル・エルスト(Nicholas van der Elst)氏は「これらの複数の大地震で発生した地震波が通過した後に、小規模の突発的な地震活動が起きるという同様のパターンを発見するまでは、本当の確信は持てなかった」とAFPに語った。「個別のケースはどれも偶然の一致の可能性があるが、系統的に観察し始めると、実際に物理的な関連が見られるという確信をさらに深めることができる」

■急増する地震、フラッキング急増と時期重なる

 この研究は、米国中部での地震の急増を説明する助けになる。同地域では近年、地震の発生回数が20世紀の水準に比べて6倍以上増加している。サイエンス誌に本論文と同時に発表された論文によると、米国中部でのM3.0以上の地震の発生回数は、1967年から2000年までは平均で年間21回だったが、その後の2010年から2012年では300回にも及んでいるという。

 この変化は、大量の流体を用いて岩盤に割れ目を作り、そこから天然ガスを取り出す水圧破砕法(フラッキング)として知られる方法に基づく天然ガス採掘ブームと時期が重なる。

 採掘会社は、天然ガスや石油を地中深くから取り出した後、廃水を地中に注入する場合が多い。

 米内務省は昨年、主にテキサス、コロラド、アーカンソー(Arkansas)、オクラホマ、オハイオ(Ohio)の各州における地震活動の上昇を認めた。同省によると、これらの州では、注入井による廃水処理が「著しく増加」しているという。

 流体圧力が高くなっている熱水地帯など、自然な環境下にある地域でさえも、遠方で発生した地震の影響で地震が発生する可能性があることは、科学者の間で長らく知られていた。

 だが今回の研究は、石油やガスの採掘およびに廃水の地下井戸廃棄に関連した地震発生リスクをいかに管理するかという問題を提起している。

 論文の共著者の1人で、ラモントドハティ研究所の物理学者、ヘザー・サベージ(Heather Savage)氏は「地震波の通過は、ストレステストのようなものだ」と言う。「小型の地震の発生回数が増加する場合、断層のストレスが危険な状態になりつつあり、間もなく規模の大きな地震が発生する可能性があることを示唆している」

 これまでで最大の地震は、1年前に発生したチリ地震に誘発され、2011年11月6日にオクラホマ州プラーグで起きたM5.7の地震だ。米国内で相次いだ地震による揺れは多くの人が感じたものの、被害は最小限で死者も出ていない。だが他国では同程度の地震が深刻な被害をもたらし、人命が犠牲になったケースもあると研究者らは指摘する。

 科学者らは、特定の地域がいつ危険な段階に到達するかを予測できない。このことは、人間の活動によってもたらされる地震リスクを減少させるための「運用戦略を立案する際の主要な問題」になるとファン・デル・エルスト氏と研究チームは述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN