【7月15日 AFP】陸上、男子100メートルの元世界記録保持者で、14日にドーピング検査で禁止薬物の陽性反応を出していたことが明らかとなったアサファ・パウエル(Asafa Powell)が、五輪と世界陸上で金メダルを獲得することなくキャリアを終える可能性が出てきた。

 パウエルはこれまで、五輪や世界陸上大会の個人種目で金メダルに輝いたことがない。

 2005年6月に100メートルを9秒77で走って世界新記録を樹立したパウエルは、その後自らの記録を9秒74に更新し、2008年5月に同じジャマイカのウサイン・ボルト(Usain Bolt)に破られるまでの約3年間、世界最速の選手として輝かしいキャリアを築き上げた。

 しかし、パウエルがこれまでメダルを手にした五輪と世界陸上の大会は、2008年北京五輪と、2009年の第12回世界陸上ベルリン大会(12th IAAF World Championships in Athletics Berlin)のみ。どちらも金メダルだったが、ジャマイカの男子4×100メートルリレーチームの一員としての獲得だった。

 現在30歳のパウエルは、五輪では3大会連続で100メートル決勝に進出しているが、2004年のアテネと、2008年の北京では5位となり、2012年のロンドン五輪では股関節を痛め、最後尾の8位に終わった。

 これまでにパウエルの100メートル記録を破った選手は、ボルトとヨハン・ブレイク(Yohan Blake、ジャマイカ)、そして2007年の第11回世界陸上大阪大会(11th IAAF World Championships in Athletics Osaka)で優勝したタイソン・ゲイ(Tyson Gay、米国)の3人だけしかいない。

 ゲイはパウエル同様、14日に薬物テストで陽性反応が出たことを認めており、8月に行われる第14回世界陸上モスクワ大会(14th IAAF World Championships in Athletics Moscow)を欠場する。

 世界記録の樹立者で、これまで90回以上のレースで10秒を切るタイムを出しているパウエルは、アテネと北京五輪で金メダルの最有力候補と呼ばれていた。

 2011年には9秒78というシーズン最速記録を打ち出したが、再び股関節を痛め、同年の第13回世界陸上大邱大会(13th IAAF World Championships in Athletics Daegu) に出場することができなかった。

 一方、2006年にはオーストラリアのメルボルン(Melbourne)で開催された英連邦競技大会(コモンウェルス・ゲームズ、Commonwealth Games)で優勝した他、IAAFゴールデンリーグ(IAAF Golden League 2006)で6戦全勝を達成し賞金25万ドルを獲得。国際陸上競技連盟(International Association of Athletics FederationsIAAF)が選ぶ、アスリート・オブ・ザ・イヤーに選出された。(c)AFP