【7月12日 senken h】時として人は逸話的な映画に感動を覚えたりもする。光が当たった一面のみを見て、全てを知っているかのような錯覚に陥ることもあるからだろう。奥深い魅力を備えたオトコたちをキーワードに、3作のフレンチシネマをピックアップ。

■『最後のマイ・ウェイ』

 おそらく誰もが知っていると思われるフランク・シナトラが歌う「マイ・ウェイ」。だが、この曲の作り手はなんとクロード・フランソワという、39歳の若さで人生の幕を閉じたフランスのスーパースターだった。フランス映画最高額の製作費(2000万ユーロ)、ヨーロッパ映画史上最多(230)のセット・デコレーションなど、さまざまな記録を樹立した「最後のマイ・ウェイ」。そのタイトルには生涯クロードの仕事を認めなかった父へ、そして2人の息子たちからクロードが果たせなかった夢の実現といった密やかな思いが込められている。徹底的な役作りに励んだ主演のジェレミー・レニエの熱演ぶりは心揺さぶられる。

■『タイピスト!』

 ポップでキュートなファッションのエスプリが利いたフレンチ・エンタメ「タイピスト!」は、女性たちの社会進出に変化が生じた1950年代のフランスが舞台。さり気ないユーモアのセンスが心地良い本作は、実在したタイプライター早打ち大会に挑む上司と秘書による、いわばスポ根系の物語。厳しさの内に秘めた部下への愛の温かさと、「アメリカ人にはビジネスを、フランス人には恋を」といったフレーズが、ベストマッチングを奏でる。ロマン・デュリス演じる鬼コーチと化す上司役は、いつもの彼と異なるテイストが妙に和み、新たな魅力を発揮しているかのよう。

■『ノーコメント by ゲンスブール』

 セルジュ・ゲンスブールが自身の内面を語った録音テープを元に構成されたドキュメンタリー「ノーコメント by ゲンスブール」。「彼がもし私的な日記を書いたなら」という監督の仮定からスタートしただけあり、かつて見聞きしたことのない、そんなゲンスブールに出会える作品だ。ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキン、彼女との娘シャルロット、ヴァネッサ・パラディほか、彼の人生に大なり小なり関わった女性たちとの映像も感慨深い。彼のファンであるか否かに関係なく、1人の才能あふれる人物の足跡と真実を知る機会になるだろう。(c)senken h / text:宇佐美浩子


【関連情報】
「タイピスト!」 公式サイト<外部サイト>
「ノーコメント by ゲンスブール」 公式サイト<外部サイト>
「最後のマイ・ウェイ」 公式サイト<外部サイト>