【7月10日 AFP】未だ謎の多い自閉症を研究する研究専門家らのチームは9日、胎児の発達中の脳にあるタンパク質を標的にする母親由来の抗体群を発見したと発表した。医学誌「Translational Psychiatry」に掲載された報告書によると、研究チームは自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの母親246人と、障害のない子どもの母親149人を比較し、ASDの子どもの母親のグループでは、全体の4分の1近くにこの抗体群の組み合わせがあることを突き止めたという。

 抗体は免疫系における「歩兵」で、「キラー細胞」が標的とするウイルスや微生物に印を付ける役割を担っている。だがときに、これらの抗体は自己の健康なタンパク質を標的にする原因不明の行動をとる「自己抗体」となる。この自己抗体は、ループスや関節リウマチ、多発性硬化症などの自己免疫疾患に大きくかかわっている。

 妊娠した女性は胎盤を通じて胎児に抗体を送っている。だが、正常に機能していない抗体も同時に送られ、赤ちゃんにとって必要なタンパク質を標的にすることがあるという。

 論文の執筆者で米カリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)のジュディ・バンデウォーター(Judy Van De Water)教授(医学)はAFPの取材に電子メールで返答し、「われわれは自閉症の子どもの母親の23%に、健康な神経の発達に必要なタンパク質に対して自己抗体があることを発見した」と述べた。「一般的な発達をしている子どもの母親の血液からは、これらの抗体は発見されていない」

■早期検査や治療の開発加速か

 バンデウォーター氏によると、研究では、これらの自己抗体群が「とりつく」7種類のタンパク質を明らかにした。これは一部のASDの発達について極めて重要なヒントとなり、早期の予測検査と治療の開発を加速させる可能性もある。

 また研究チームは、7種類のタンパク質による11通りの組み合わせを発見した。各組み合わせによりASD発症リスクのレベルは異なるという。

「極めて早期の行動的介入は、ASDのある子どもが行動や能力を向上させることを助ける効果がある。そのため、このこと(タンパク質の組み合わせ)を極めて早期に知ることには有効性がある」と、バンデウォーター氏は述べた。「検査は妊娠前に行うことが可能なので、女性は代理母を考えるか、ASDの子どもが生まれた場合に早期の介入を行うための準備をするか、判断することができるようになる」

(c)AFP