【7月9日 AFP】月の塵(ちり)が機器類や人間に及ぼす影響にはまだ不明な点が多く、月再訪を妨げる脅威となる恐れがあるとの研究が、5日に閉幕した英王立天文学会(Royal Astronomical SocietyRAS)の年次会議で発表された。

 同会議での研究発表によると、月の重要区域で、着陸や探査によって舞い上がったちりは、一時的に月の重力に打ち勝つ大きさの静電気力を得ることが、英国とフランスの科学者らが行ったシミュレーションで明らかになったという。その結果、ちりは月面上空の高所に残存して、粘着性の研磨微粒子でできた灰色の薄雲を形成する。この微粒子が視界を遮り、太陽電池パネルの表面を覆い、機器の可動部分を動かなくする恐れがあるという。

 さらに、月のちりの中には鉄を多く含むものがあり、これを人間が吸引した場合、人体に有害な影響が及ぶ恐れがあるという。

 月のちりは、静電気の帯電によって発生する力で、空中に浮遊したり粘着性を帯びたりする。ちりは太陽光の紫外線にさらされると電子が追い出され、正の電荷を帯びる。だが夜間や影に入った場合に、太陽から噴き出される粒子が降り注ぐと、ちりは電子を受け取って負の電荷を帯びる。ちりの運動の大半は、太陽が昇る、または沈む地域で起きる。反対の電荷を帯びたちり粒子がかき乱されて、互いに引き寄せられ、薄雲となって浮遊する。

 英ランカスター大学(Lancaster University)のファリデ・ホナリー(Farideh Honary)教授は「月面上の大半で、探査車は約14日間連続で太陽光を浴び、その後に14日間連続で暗闇に包まれる。そのため、この2つの状態間の遷移は、地球の基準からすると長時間持続することになるだろう」と話す。「エンジニアはこの点を必ず考慮に入れる必要がある」

 箱型や、ちりが積もる隙間や平面が多数ある探査車などとは対照的な、ちりが滑り落ちる「ドーム形状」をした探査車を製作するのも、優れた選択肢の1つだろうと同教授は述べている。(c)AFP