【7月8日 AFP】瞑想する僧侶たちや、ヒマラヤ(Himalaya)の遊牧民たちが暮らすのどかな王国、ブータンは今、国土に流れる曲がりくねった河川の数々を活用してエネルギー大国を目指すという、思いがけない目標を掲げている。

 ブータンではすでに、水力発電所からの電力が、険しい山地をぬって張られたケーブル線で僻地の村まで送られ、ほぼ全ての家庭を照らしている。

 長期にわたって孤立していた国ブータンは、1999年に世界で最後にテレビが導入された国となった。また、同年に電気が通じていた所帯数は4分の1に満たなかった。そんなブータンに今、急激な変化が起きている。

 再生可能な水力発電は、今やブータンの最大の輸出源となっているが、2020年までに国内総生産(GDP)の半分以上を水力発電でまかなうという、さらに大きな野心を同国は抱いている。

 ブータンの水力発電部門を経営・管理する国営企業ドルック・グリーン・パワー・コーポレーション(Druk Green Power Corporation)のChhewang Rinzin専務理事は、水力発電を「ブータンのホワイトゴールド(白色金)」と呼ぶ。現在の主要発電所4か所の最大発電量の合計はほぼ150万キロワットで、大型原発1基分に匹敵する。これはブータンの潜在水力発電量のわずか5%だ。

 河川が増水する夏季の発電量は国内消費量を大幅に上回り、電力の大半はエネルギーに飢えている隣国のインドに売却している。ブータン政府は、インド政府からの補助金や借款といった協力を得て、2020年までに10か所の発電所を新たに建設し、計1000万キロワットを発電する計画を立てている。(c)AFP/Rachel O'BRIEN