【7月2日 AFP】メール受信やフェイスブック(Facebook)、ツイッター(Twitter)の投稿がないか、2、3分おきにスマートフォン(多機能電話)をチェックするのにうんざりしていませんか?デート中に相手と話すよりも、携帯端末を眺めている時間のほうが長くありませんか?デジタル版燃え尽き症候群の一歩手前ではないですか?

 心配ご無用。IT中毒からの「デトックス」(解毒)を試みる人たちのために、さまざまな方法が登場している。

「みんな年がら年中、どこでも、どんな格好でもネットをやっている。ベッドに寝っ転がったり、レストランから待合室まで」というのは、フランスの統計調査会社イプソス(Ipsos)のディレクターで関連書籍の著書もあるレミー・ウディリ(Remy Oudghiri)氏だ。こうしたことができる機器を持つ人たちは増えている。米国では成人の半分がスマートフォンを、3分の1がタブレット端末を持っている。

「インターネットが急速に普及して最初の熱狂的に盛り上がった時期が過ぎ、ユーザーたちはインターネットの便利さを活用しながら、人生を楽しむにはどうしたらいいか考えるようになっている。いわば、どうすれば『依存』を避けられるかを考えている」とウディリ氏は分析する。

 フランスの研究チームはある解決方法を編み出した。無線LANを遮断する壁紙だ。仏重電メーカーグループ、アルストロム(Ahlstrom)が現在、来年の発売を目指して開発を急いでいる。生徒に長時間スマートフォンを使わせたくない学校をはじめ、すでに各方面から興味を持たれている。

 イプソスの調査によれば、フランス人の3分の1が、「インターネット断ち」の必要性を感じており、世界各国でも似た傾向だという。また昨年の同社調査では、フランス人の71%が「新しいテクノロジーの到来によって人と集う時間が減った」と感じている。

■「IT断ち」旅行パックも

 企業は人々のこうした「疲労感」に乗じ、特に観光業界では「デジタル・デトックス」を売りにするホテルやリゾートが登場し始めている。例えば高級ホテルチェーン、ウェスティン(Westin)ではアイルランドの首都ダブリン(Dublin)で、チェックイン時に受付にスマートフォンやタブレット端末を預け、代わりに植物栽培キットやボードゲームが入った「デトックス・セット」を提供している。しかし、この宿泊パックは1泊175ユーロ(約2万2500円)と値が張る。

 もっと完全に「IT断ち」ができる旅行パックを提供している会社もある。米国の「デジタル・デトックス(Digital Detox)」では米国内の辺境の地や、カンボジアなどへの「逃避ツアー」を企画している。

 夜を徹してEメールやブログやツイッターを使うほどとりつかれ、燃え尽き症候群のようになった後、6か月間「IT断ち」をして禁断症状も出たフランス人ブロガーのティエリ・クルーゼ(Thierry Crouzet)さん(49)は、「J'ai Débranché」(電源を入れない私)と題する本に体験をまとめた。「周りもみんな休み始めている。結局(テクノロジーは)私たちを豊かにするものではないと気付くんだ」

 しかし、ブロガーのクルーゼさんは、仕事でメール連絡が必要な人たちよりも自分の方が、IT断ちは簡単だったという。

 週7日間、24時間休まず連絡がつく状態から従業員を解放するための策を採用した企業もある。2011年、独自動車メーカー・フォルクスワーゲン(Volkswagen)は、午後6時15分から午前7時の時間帯に従業員が持つ携帯電話へのEメール送信を止めることを決定した。

 ソーシャルネットワークなどをどうしても使わずにはいられないという人たちには、「アンチ・ソーシャルcc(anti-social.cc)」というウェブサイトがある。ここでは顧客から提出された「気の散るリンク先」一覧へのアクセスを、決まった時間帯だけ、できなくするソフトウエアを提供している。

■それでも駄目だった人には…

 こうした努力のすべてに失敗しても、例えば米国初の「IT避難センター」をうたう「リスタート(reSTART)」などのリハビリ施設がある。そのウェブサイトによれば利用者の大半は18~28歳で、インターネットにはまり過ぎて大学を卒業できない、オンライン上ではなく現実の人間関係を築いたり維持したりできないといった問題を抱えてやって来るという。

 イプソスのウディリ氏は「中毒、という言葉は使いたくない。むしろ依存症といいたい。それに薬物依存症などとは違って、もっとずっと脱出しやすい」と述べている。(c)AFP/Marianne Barriaux