【6月25日 AFP】水圧破砕法(フラッキング)による飲料水汚染の可能性を示す新たな証拠が24日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。岩盤に割れ目を作り、そこからシェールガスを取り出すこの方法をめぐっては賛否両論があり、今回の発表によって議論が一層激しくなると予想される。

 米デューク大学(Duke University)の研究者らは、豊富な埋蔵量で知られるシェールガス田、米ペンシルベニア(Pennsylvania)州のマーセラス(Marcellus)・シェールで、個人が所有する井戸から採取した飲料水のサンプル141点を分析した。

 その結果、シェールガスの掘削場から1キロメートル以内にある住宅の井戸では、メタン濃度が通常の6倍、エタン濃度が通常の23倍であることがわかった。また、プロパンも10点のサンプルから検出された。

 研究の著者、ロバート・ジャクソン(Robert Jackson)教授(環境科学)は、「メタン、エタン、プロパンなどのデータ、それに加えて、炭化水素やヘリウムの同位体から得た新たな証拠により、掘削が一部の住宅の水に影響を与えている可能性が示された」と話す。

 ジャクソン教授によると、エタンとプロパンによる汚染を示すデータは、「新たな証拠であり、それを否定するのは困難」だという。「この地域にはエタンとプロパンの生物学的発生源は存在しないが、マーセラスのガスにはその両方が多く含まれる」

 水圧破砕法とは、水、砂、化学物質を深いガス井に高圧で注入し、炭化水素が豊富なシェール層を破砕して天然ガスを取り出す掘削技術。この掘削方法は米国における天然ガス生産を大幅に増加させたが、フランスなど他の国々では、環境への影響が懸念されることから禁止されている。(c)AFP