【6月16日 AFP】イラン大統領選は15日夜、保守穏健派で国際社会とのより建設的な関係構築を提唱するハサン・ロウハニ(Hassan Rowhani)元最高安全保障委員会事務局長(64)が圧勝し、8年間に及ぶ保守強硬派の政治に終止符を打った。

 イラン内務省の発表によると、ロウハニ師の得票数は1860万票で、得票率は50.68%。保守強硬派のモハマド・バケル・ガリバフ(Mohammad Baqer Qalibaf)テヘラン(Tehran)市長(607万票)、サイード・ジャリリ(Saeed Jalili)最高安全保障委員会事務局長(317万票)を大きく引き離した。投票率は72.7%だった。

 勝利後の初の声明でロウハニ師は、イランが持つ権利を認めるよう諸大国に求めた。イランの核開発を念頭に置いたものとみられる。

 唯一の改革派候補だったモハマド・レザ・アレフ(Mohammad Reza Aref)元第1副大統領が11日、改革派のモハマド・ハタミ(Mohammad Khatami)前大統領の要請を受け入れて大統領選からの撤退を表明し、ロウハニ師の支持に回ったことで、穏健派と改革派の票がロウハニ師に集まった。

 2009年の前回大統領選では、保守強硬派のマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領の当選に抗議する市民が大規模なデモを展開し、当局の鎮圧で死者を出す事態となった。2期8年の任期を務めたアフマディネジャド大統領は憲法の規定により今回の大統領選には出馬できなかった。

■経済制裁の解除を目指すと公約

 ロウハニ師はハタミ前政権で核開発問題をめぐる交渉の責任者を務めた人物で、当時のイラン政府は2003年にウラン濃縮活動の停止を約束した。しかしアフマディネジャド氏が大統領に就任した2005年にイランは核開発計画を再開。欧米が核兵器開発が目的ではないかと疑念を強める中、イランは諸大国との対立を深めていった。

 欧米による経済制裁で、イラン経済の根幹である石油産業と銀行業は大打撃を受けた。インフレ率は30%を超え、通貨リアルの価値は70%近く下落。失業率も上がり続けており、有権者の関心は経済に集まっていた。

 選挙戦でロウハニ師は、経済制裁の解除を目指すと公約。核開発計画において諸大国の要求に「屈することはない」と述べつつ、より建設的で、対決姿勢を抑えた態度で交渉に臨むことを約束し、1979年の米大使館人質事件で国交を断絶して以来宿敵と化した米国との関係改善を掲げた。

 また、穏健派のアリ・アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニ(Ali Akbar Hashemi Rafsanjani)元大統領との密接な繋がりを強調する一方、重要政策に関して最終決定権を持つ最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師との関係性も強くアピール。「女性に対する差別はもはや容認できない」とも主張した。

 ロウハニ師は、公式発表によれば英スコットランド(Scotland)のグラスゴー・カレドニアン大学(Glasgow Caledonian University)で法学の博士号を取得。結婚し、4人の子供がいる。(c)AFP/Farhad POULADI