【6月11日 AFP】害虫抵抗性のある最も一般的な遺伝子組み換え作物に対して、栽培者が専門家の指示に従っていない地域では、より多くの種の害虫が耐性を持ち始めているとの研究が、10日の英科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」に発表された。

 米仏の研究者からなるチームは、害虫にとって有毒なバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensisBt)と呼ばれる細菌タンパク質を排出させる効果のある遺伝子を組み込んだ、いわゆる「BTトウモロコシ」や「BT綿」に関する、5大陸8か国における77件の研究を詳しく分析した。

 主な13種の害虫を調査したところ、2005年に耐性を獲得していたのは1種だけだったのに対し、2011年には5種に増加。この5種のうち3種は綿の害虫、2種はトウモロコシの害虫だった。また、5件のうち3件はBT作物の約半分が栽培されている米国、残りは南アフリカとインドで報告された。

■耐性獲得遅らせる鍵は「避難所」

 研究は、BT作物に対する耐性が獲得されるまでのスピードに大きな違いがあることを突き止めた。たった2年で最初の兆候が現れる場合もあれば、2011年の時点で15年前に植えられた作物が効果を保っている場合もある。

 こうした違いは、「避難所」となる非・BT作物のための十分な土地を、栽培者が別に設けているかどうかによって生まれるという。「避難所」という考えは、進化生物学からくるものだ。耐性を授ける遺伝子は劣性であるため、害虫は耐性遺伝子を両親から1つずつ引き継いだ場合のみ、BT作物への耐性を持つことができる。BT作物の畑の近くに「避難所」を作れば、耐性を持つ害虫同士が交配して子孫に2つの同じ遺伝子を与える可能性を減らすことができる。

 米南西部で栽培されているBT作物には、栽培者が科学者と協力して「避難所」方式に取り組んでいるため、耐性の問題は生じていない。しかし、インドでは、栽培者がガイドラインに従わない、サポートを受けられない、などの理由で、ワタアカミムシが6年以内に耐性を獲得している。

 研究はまた、害虫はあらゆる脅威に順応する性質を持つため、BT作物に対する耐性は単に時間の問題であると警告している。しかし、「避難所」という考えが、それを打ち砕く鍵となる。研究の共著者、米アリゾナ大学(University of Arizona)のブルース・タバシュニク(Bruce Tabashnik)氏は、「より広大な避難所を設けるなどさらに厳格な方策をとらない限り、害虫は急速に耐性へと進化していくだろう」と指摘している。

 2011年だけ見ても、BT作物の作付面積は6600万ヘクタールに上る。同年、米国で植えられたトウモロコシの67%がBTトウモロコシで、米国、オーストラリア、中国、インドで植えられた綿の79~95%がBT綿だった。(c)AFP