【6月6日 AFP】(写真追加)過去10年余りで最悪の被害を出している欧州中部の洪水による死者は、5日までに12人となった。チェコとドイツでは、春の雨で増水し激流と化した河川が氾濫して泥水が村々を呑み込み、都市部にも迫る中、多くの住民が避難を強いられている。

 今回のドナウ(Danube)川・エルベ(Elbe)川水系の洪水では、オーストリアでも大規模な避難が始まっており、下流のハンガリー・ブダペスト(Budapest)でも大量の水が到達する懸念が高まっている。

 スロバキアでは5日、南部のガブチコボ(Gabcikovo)ダム近くのドナウ川で1人が遺体で見つかり、同国初の犠牲者となった。この洪水ではこれまでにチェコで8人、オーストリアで2人、スイスで1人が死亡している。

 既に広範な地域が洪水の被害に遭っているドイツ東部では、エルベ川の水位が普段より6メートル上がってなおも上昇を続けており、状況はさらに悪化する見込みだ。8つの市と地区で非常事態宣言が出され、約4万人の消防隊員、数千人のボランティアと、フランスとオランダからの応援を含む約5000人の兵士が、大規模災害を食い止めるため必死の活動を続けている。

 懸念の中心は、バロック音楽の作曲家ヘンデル(George Frideric Handel)生誕地でもある独ザクセン・アンハルト(Saxony-Anhalt)州ハレ(Halle)で、エルベ川支流のザーレ(Saale)川の水位が過去400年で最高水準に達した。水は既に堤防に浸透し始め、幅200メートルにわたって損害が出ている。市中心部は1メートルの高さまで冠水し、当局は住民3万人に避難を呼びかけている。

 各地で村を島へと変えた今回の洪水は、2002年以来最悪の被害をもたらしている。(c)AFP/Andrea Hentschel