【6月3日 AFP】中国共産党機関紙の人民日報(People's Daily)は3日、香港で展示されているアート作品を模倣した巨大な黄色のアヒルが中国各地に出現している現象について厳しい口調で批判した。

 1か月前の登場以来、香港のビクトリア・ハーバー(Victoria Harbour)に浮かぶオランダ人アーティスト、フロレンティン・ホフマン(Florentijn Hofman)氏の全高16.5メートルのアヒルは、香港のみならず中国本土で大きな注目を集めた。

 そこで、杭州(Hangzhou)や武漢(Wuhan)、天津(Tianjin)など各都市の不動産デベロッパーが顧客の掘り起こしに使おうと、この作品を模倣した小型の黄色いアヒルを各都市に設置した。

 これらデベロッパーの行動について、中国最大の発行部数を持つ人民日報の3日の社説は、模倣者らがホフマン氏が伝えようとしている「メッセージ」を裏切っているとして批判した。

■「模造品は想像力を喪失させる」

 人民日報の社説は、アヒルは「人類共通の文化と子ども時代の思い出」の象徴であり、「反商業主義の純粋なアート」だが、模倣されたアヒルはただの「模造品」と切り捨てた。

 社説は、そのような模倣行為は「われわれのクリエイティビティと未来を損ない、ついには想像力の喪失をもたらすだろう」と厳しい口調で述べ、「黄色のアヒルが増えれば増えるほど、ホフマン氏の反商業主義の精神からは遠ざかり、さらに明らかなことは、われわれのクリエイティビティを弱体化させるということだ」と批判した。

「ゴム製のアヒルが人気なのは結構なことだ。だがわが国のイノベーションが落ちる様子を目の当りにすることは悲しい。われわれは自らの文化に対する意識と自信についてよく語る。だがそれはどこから来るのか。新しい流行を追いかけることからでは絶対にない」

 さらに社説は、湖南(Hunan)省の観光当局が「南天一柱」の名で知られていた山が、大ヒット映画『アバター(Avatar)』の地形にインスピレーションを与えたことを受け、「アバター・ハレルヤ山(Avatar Hallelujah Mountain)」に改名した出来事にも触れ、「これはイノベーションではない。これはわれわれの遺産を売り払っているのだ」と併せて批判した。

■模造品続々、オリジナルより大きいアヒルも

 一方、中国では多くの製造企業がこのアヒルの模造品の製造を始めている。そのうちの1社、KK Inflatableは、中国ネットオークション最大手「淘宝(タオバオ、Taobao)」であらゆる大きさのアヒルを販売している。

 価格は全高2メートルのアヒルが2800人民元(約4万6000円)、ホフマン氏の作品と同サイズのアヒルは11万8000元(約190万円)、そして最大の全高20メートルの巨大アヒルは14万9800元(約240万円)となっている。(c)AFP