【6月3日 AFP】ドイツ・ソフトウエア大手のSAPは先月、自閉症を抱える人々数百人をIT専門家として雇用する計画を発表したが、ベルリン(Berlin)にある小さなコンピューター・コンサルティング会社Auticonは特にこの知らせを歓迎している。

 Auticonは自閉症を抱えて暮らす人々の雇用では先駆的で、すでに17人を雇用している。自閉症疾患の特徴として、社会的な交流に困難を抱えるが、特定の分野で並外れた才能を発揮する点が挙げられる。

 企業向けソフトウエアを手掛けるSAPは5月、インドとアイルランドで試験プロジェクトを行った後、自閉症を抱える人々数百人をソフトウエアテスターやプログラマーとして雇用する計画を明らかにした。SAPは2020年までに、自閉症を抱える従業員の数を、同社の全従業員数6万5000人の1%に相当するまでに拡大することを目標としている。

 SAPに比べてはるかに小規模な会社、Auticonのディルク・ミュラー・レムス(Dirk Mueller-Remus)社長は2011年11月、潜在的な従業員の「強みに投資する」という理念を持って同社を設立した。自身の息子も10代で、自閉症の一種であるアスペルガー症候群と診断された同社長は、自閉症患者の多くが、プログラミングや品質管理などの分野に優れていることを以前から知っていた。

 同社には現在、25人の従業員がおり、事務所はベルリンの他、ミュンヘン(Munich)とデュッセルドルフ(Duesseldorf)にあり、ハンブルク(Hamburg)にも開設する予定だ。同社長によると「今年中には」採算が取れることを目指しているという。

 同社長は「補助金なし、寄付金なし、基金からの資金援助なしの、通常のコンサルティング企業にしたいと思った」と述べ、目標は「社会貢献とビジネスとの一体化」だと付け加えた。

■「複雑」だが「素晴らしい結果」得られる可能性

 だが同社長は、自閉症の人と仕事をするのは「非常に複雑な問題」になる恐れもあると強調し、「アスペルガー(症候群)の人は非常に要求が厳しいので、われわれは多くの間違いを犯す恐れがある」と述べた。

 Auticonで「ジョブ・コーチ」として、従業員が同僚や顧客との関係を保つのを支援しているエルケ・セング(Elke Seng)氏は「自閉症の人は、非常に具体的で明確だ」と述べ、「あいまいさがまったくなく、1かゼロかしかない。 むしろ気持ちがいいくらいだ」とほほ笑んだ。

 自閉症患者発達支援連盟(Federal Association for the Development of People with Autism)によると、「自閉症患者で、正規雇用市場で職が見つかる人はわずか5%から10%程度」だという。

 ミュラー・レムス社長は、自閉症の人は多くの場合「状況認識力に乏しく、横柄に見えるかもしれない。おしゃべりに興味がなく、人に興味を示さない。人は論理的ではないからだ」として、このすべてが、誤解を生じ、時には深刻な結果を招く場合もあると述べた。

 こうした背景の中で、AuticonはSAPの取り組みを大いに称賛している。

 同社長は「SAPはこれがいかに困難かを知っていると思うが、何事もうまく運べば、本当に素晴らしい結果が得られるだろう」と話した。(c)AFP/Eloi ROUYER