【5月31日 AFP】フランスのエリゼ宮(Elysee Palace、大統領府)が所蔵していた約1200本の高級ワインが30日、競売に掛けられ、フランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領の下には「フランスの国家遺産を売りに出した」という批判が集まっている。

 財政難に直面する仏政府の緊縮政策の象徴となったオークションには、国内すべての主要な産地のワインの他、世界で最も高級とされ最も高価な二つのワイナリー、ボルドー(Bordeaux)地方のシャトー・ペトリュス(Chateau Petrus)とブルゴーニュ(Burgundy)地方のドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(Domaine de la Romanee-Conti)などのワインが多数出品された。

 パリ市内のオークションハウス、ドゥルオー(Drouot)で行われた競売には同日、見物人を含め約250人が詰め掛けた。競売の開催は31日までの2日間。インターネットを通じて約200人の参加が見込まれている他、遠方からの入札のために15本の電話回線も用意されている。

 30日に真っ先に競り落とされたうちの1本は、シャンパン「クリュッグ(Krug)」の1985年物で、落札価格は1200ユーロ(約16万円)だった。

  今回の競売の目的は、公式には大統領府のワイン・コレクションを新しいものと入れ替えるための資金調達だが、政府関係者によれば、競売の収益で新たに購入するワインはより安価なものとし、余剰分は国庫に戻すという。

 こうした政府の方針に対し、フランスの著名なワイン収集家らからは反対の声も上がっている。その1人、ミシェルジャック・シャスイユ(Michel-Jack Chasseuil)氏は、オランド大統領に宛て「わが国の遺産の一部であるワインが世界中の富豪たちに売り払われる」ことは遺憾だとの書簡を送ったという。(c)AFP/Caroline TAIX