【5月31日 AFP】人工妊娠中絶が固く禁じられているエルサルバドルで、出産直後に死亡する可能性の高い胎児を妊娠中で、自らも慢性疾患を抱える女性が特例的な堕胎許可を求めていたことについて、最高裁は29日、この妊婦の中絶を認めないという判断を示した。

 ベアトリス(Beatriz)さん(姓非公開、22)は2歳の男児の母親で、現在妊娠25週。最近になって、免疫低下を引き起こす「全身性エリテマトーデス」と診断された。また医師によると、ベアトリスさんの胎児は無脳症で、脳と頭蓋骨の全部または一部が欠損しており、出産直後に死亡する可能性が高いという。

 このような窮状を訴えたベアトリスさんに対し、最高裁は中絶厳禁の姿勢を貫き、胎児より母親の権利を優先させることはできず、また逆も同じだという見解を示した。

 同国で中絶禁止に違反した場合の刑罰は禁錮50年。この最高裁判断に先立ち、同国のマリア・イサベル・ロドリゲス(Maria Isabel Rodriguez)保健相は最高裁に対し、ベアトリスさんの中絶の特例許可と、堕胎手術を行う医師に対する刑事免責を求めていた。

 今回の最高裁判断について女性権利団体は猛烈に批判している一方、カトリック系組織は称賛している。(c)AFP/Oscar BATRES