【5月27日 AFP】第66回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)は26日、関係者のいう「アジア映画の際立つ時代」を世界に紹介し、閉幕した。特に中国がクリエーティブ大国として頭角を現している。

 今年のカンヌ映画祭では、中国、日本、シンガポール、カンボジアからの監督らが、世界で最も名誉ある映画祭のメイン会場パレ・デ・フェスティバル(Palais des Festivals)の壇上に上がった。

 中国のジャ・ジャンクー(Jia Zhangke)氏(43)は、監督と脚本を手がけた『ア・タッチ・オブ・シン(英題、A Touch of Sin)』で近代中国における腐敗や欲深さ、搾取を描き、映画祭審査員長のスティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督に「まさに洞察力ある」と評されるなど、映画祭の賞賛を浴びた。

『ア・タッチ・オブ・シン』は、絶望的な行動に駆り立てられる貧しい人たちの4つの実話に基づいた映画で、資本主義的共産主義の中国をこれまでで最大級に批判する内容が含まれている。

「中国は今、急速に変化している。自由を追求するための最良の方法が映画だと、私は考えている」と、授賞式でジャ監督は語った。

 また、スピルバーグ監督は記者会見で「中国は世界の映画の市場として強くなっているだけでなく、作り手としても強くなっている」と語った。

■日本、シンガポール、カンボジアの映画も各賞受賞

 日本の是枝裕和(Hirokazu Koreeda)監督作品『そして父になる』は、審査員賞を受賞した。出生時に病院内で子どもを取り違えられた2家族の物語だ。

 また、シンガポールのアンソニー・チェン(Anthony Chen)監督は新人監督賞のカメラ・ドール(Camera d'Or)を受賞。シンガポールの長編映画がカンヌ映画祭で賞を受賞したのは史上初めてだ。

 チェン監督の『イロ・イロ(原題、Ilo Ilo)』はアジア金融危機が起きた1997年のシンガポールを舞台にした、ワーカホリックで野心的な中流階級の家庭と、そこで働く家政婦の物語だ。

 さらに25日には、カンボジアのリティー・パニュ(Rithy Panh)監督が、クメール・ルージュを題材にしたドキュメンタリー作品で、若手監督を紹介する「ある視点(Un Certain Regard)」部門の最高賞を受賞していた。(c)AFP/Richard INGHAM