米ミサイル防衛システム、技術上の疑念払拭できず
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【5月24日 AFP】ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)米元大統領により「スター・ウォーズ(Star Wars)計画」の開発が開始されてから30年──その技術力をめぐっては常に懐疑的な見方が絶えないまま、高価な技術である「ミサイル防衛プログラム」は米戦略上の柱となっていった。
かつては旧ソ連の核攻撃を念頭に開発が進められた迎撃ミサイルのネットワークだが、今日では北朝鮮やイランによる、いわば「限定的な攻撃」の阻止を目的としている。ただ多くの専門家らは、このシステムは機能しないのではと懐疑的だ。
1980年代の発案時には激しい論争を巻き起こした同プログラムだが、今日の米政府内ではその地位は確固たるものとなった。しかし、大気圏外を飛ぶ弾道ミサイルを別のミサイルで打ち落とすためには高度な技術力が必要で、それは発案から30年が経過した今でも変わらない。
軍艦26隻に搭載されている海上配備型の迎撃ミサイル「SM-3」および米アラスカ(Alaska)州とカリフォルニア(California)州の格納庫に置かれた地上配備型の迎撃ミサイルは、ともに高精度レーダーを用いて、宇宙空間を飛ぶ大陸間弾道ミサイル(ICBM)といった長距離ミサイルを撃ち落とすよう設計されている。
米陸軍宇宙ミサイル防衛指令部(US Army space and missile defense command)司令官、リチャード・フォーマイカ(Richard Formica)中将は最近、議員らに対して「今日あるいは近い将来、北朝鮮やイランによる限定的な攻撃から、この弾道ミサイル防衛システムの能力が米国を守ることができると我々は確信している」と語った。
米ミサイル防衛局(Missile Defense Agency、MDA)によると、北大西洋条約機構(NATO)の迎撃ミサイルシステムでも使われている「SM-3」は、迎撃実験30回中、成功は25回だった。一方、地上配備型の迎撃ミサイルは、最後の2回で失敗しているという。
北朝鮮とイランの両国は、米国(本土)に到達可能なICBMの開発にまだ成功していないが、ミサイル防衛計画は「技術的な幻想」にすぎないと一蹴する科学者もいる。
米コーネル大(Cornell University)の物理学者、ジョージ・ルイス(George Lewis)教授とマサチューセッツ工科大(MIT)のセオドア・ポストル(Theodore Postol)教授は、2010年に共同でまとめた報告書の中で、「何十億ドルという予算を充てたにもかかわらず、高高度での弾道ミサイル迎撃については、根本的な問題がどれも未解決で、解決の兆しすら見られない」と述べている。
「米国防総省の迎撃実験は『見せかけの成功』をもたらしたにすぎない」と述べる両教授は、実験では、弾道、発射のタイミング、ミサイルの種類などすべてが事前にわかることを指摘しながら、「実験は、根本的な欠陥を隠す意図のもと、綿密に描かれたシナリオに沿って実行された」とした。
■デコイ(おとり)の検知
米国防総省は過去数年間に発表した実験報告書の中で、現時点での地上配備型迎撃ミサイルの技術は未完成であり、「単純な脅威に対しての限定的な能力しか証明できていない」と認めている。1基あたり7000万ドル(約71億5000万円)の費用がかかるという。
米国では現在、1基あたり2000万ドル(約20億4000万円)の新型SM-3の開発が進められている。この新型ミサイルについて米議会の独立監査機関である米政府監査院(Government Accountability Office、GAO)は、採用される技術が最新のものでなかったり、場合によっては「不十分」なものになるのではと懸念している。
この計画に懐疑的な人々は、複数のミサイル発射やレーダーへの攻撃、もしくはデコイ(おとり)の使用で、敵国はシステムを不能にすることができると指摘する。専門家によれば、アルミニウム製の気球や無数の小さなワイヤーなどでも、システムを混乱させることができるという。
米カリフォルニア(California)州モンテレー国際研究所(Monterey Institute of International Studies)の物理学者、ユサフ・バット(Yousaf Butt)氏はAFPに対し、「弾頭を搭載しても軽々と飛ぶことのできる、気球のような軽量のデコイは簡単に作ることができる。しかも本物と区別するのは非常に難しい」と語った。ミサイル防衛計画に携わる軍当局者など、計画の強力な擁護者でさえ、デコイは面倒な問題だと認めている。
錯綜する実験結果や、軍縮努力を踏みにじるものとしたロシアからの批判にもかかわらず、迎撃ミサイルは同盟国に売られ、また軍事産業の活発なロビー活動の後押しもあって、議会でも強く支持されている。
政府は、1980年代の計画開始以降、総額1580億ドル(約16兆1500億円)の予算が投じられたと発表しているが、実際はそれよりもさらに多いとの見方もある。
米国は財政問題に直面しているが、この計画への影響は限定的なようだ。米国防総省は2014年度の予算として92億ドル(約9380億円)を要求しており、また向こう5年間の予算として総額457億ドル(約4兆6400億円)が必要とした。
しかし、懐疑派にとって、ミサイル防衛技術は確立したものではない。物理学者のバット氏は、「宇宙空間を飛ぶ弾頭(ミサイル)に命中させることは、成功を思い描くことさえできないほど非常に難しい。それは技術的な問題ではなく、物理的な問題だからだ」と述べた。(c)AFP/Dan De Luce
かつては旧ソ連の核攻撃を念頭に開発が進められた迎撃ミサイルのネットワークだが、今日では北朝鮮やイランによる、いわば「限定的な攻撃」の阻止を目的としている。ただ多くの専門家らは、このシステムは機能しないのではと懐疑的だ。
1980年代の発案時には激しい論争を巻き起こした同プログラムだが、今日の米政府内ではその地位は確固たるものとなった。しかし、大気圏外を飛ぶ弾道ミサイルを別のミサイルで打ち落とすためには高度な技術力が必要で、それは発案から30年が経過した今でも変わらない。
軍艦26隻に搭載されている海上配備型の迎撃ミサイル「SM-3」および米アラスカ(Alaska)州とカリフォルニア(California)州の格納庫に置かれた地上配備型の迎撃ミサイルは、ともに高精度レーダーを用いて、宇宙空間を飛ぶ大陸間弾道ミサイル(ICBM)といった長距離ミサイルを撃ち落とすよう設計されている。
米陸軍宇宙ミサイル防衛指令部(US Army space and missile defense command)司令官、リチャード・フォーマイカ(Richard Formica)中将は最近、議員らに対して「今日あるいは近い将来、北朝鮮やイランによる限定的な攻撃から、この弾道ミサイル防衛システムの能力が米国を守ることができると我々は確信している」と語った。
米ミサイル防衛局(Missile Defense Agency、MDA)によると、北大西洋条約機構(NATO)の迎撃ミサイルシステムでも使われている「SM-3」は、迎撃実験30回中、成功は25回だった。一方、地上配備型の迎撃ミサイルは、最後の2回で失敗しているという。
北朝鮮とイランの両国は、米国(本土)に到達可能なICBMの開発にまだ成功していないが、ミサイル防衛計画は「技術的な幻想」にすぎないと一蹴する科学者もいる。
米コーネル大(Cornell University)の物理学者、ジョージ・ルイス(George Lewis)教授とマサチューセッツ工科大(MIT)のセオドア・ポストル(Theodore Postol)教授は、2010年に共同でまとめた報告書の中で、「何十億ドルという予算を充てたにもかかわらず、高高度での弾道ミサイル迎撃については、根本的な問題がどれも未解決で、解決の兆しすら見られない」と述べている。
「米国防総省の迎撃実験は『見せかけの成功』をもたらしたにすぎない」と述べる両教授は、実験では、弾道、発射のタイミング、ミサイルの種類などすべてが事前にわかることを指摘しながら、「実験は、根本的な欠陥を隠す意図のもと、綿密に描かれたシナリオに沿って実行された」とした。
■デコイ(おとり)の検知
米国防総省は過去数年間に発表した実験報告書の中で、現時点での地上配備型迎撃ミサイルの技術は未完成であり、「単純な脅威に対しての限定的な能力しか証明できていない」と認めている。1基あたり7000万ドル(約71億5000万円)の費用がかかるという。
米国では現在、1基あたり2000万ドル(約20億4000万円)の新型SM-3の開発が進められている。この新型ミサイルについて米議会の独立監査機関である米政府監査院(Government Accountability Office、GAO)は、採用される技術が最新のものでなかったり、場合によっては「不十分」なものになるのではと懸念している。
この計画に懐疑的な人々は、複数のミサイル発射やレーダーへの攻撃、もしくはデコイ(おとり)の使用で、敵国はシステムを不能にすることができると指摘する。専門家によれば、アルミニウム製の気球や無数の小さなワイヤーなどでも、システムを混乱させることができるという。
米カリフォルニア(California)州モンテレー国際研究所(Monterey Institute of International Studies)の物理学者、ユサフ・バット(Yousaf Butt)氏はAFPに対し、「弾頭を搭載しても軽々と飛ぶことのできる、気球のような軽量のデコイは簡単に作ることができる。しかも本物と区別するのは非常に難しい」と語った。ミサイル防衛計画に携わる軍当局者など、計画の強力な擁護者でさえ、デコイは面倒な問題だと認めている。
錯綜する実験結果や、軍縮努力を踏みにじるものとしたロシアからの批判にもかかわらず、迎撃ミサイルは同盟国に売られ、また軍事産業の活発なロビー活動の後押しもあって、議会でも強く支持されている。
政府は、1980年代の計画開始以降、総額1580億ドル(約16兆1500億円)の予算が投じられたと発表しているが、実際はそれよりもさらに多いとの見方もある。
米国は財政問題に直面しているが、この計画への影響は限定的なようだ。米国防総省は2014年度の予算として92億ドル(約9380億円)を要求しており、また向こう5年間の予算として総額457億ドル(約4兆6400億円)が必要とした。
しかし、懐疑派にとって、ミサイル防衛技術は確立したものではない。物理学者のバット氏は、「宇宙空間を飛ぶ弾頭(ミサイル)に命中させることは、成功を思い描くことさえできないほど非常に難しい。それは技術的な問題ではなく、物理的な問題だからだ」と述べた。(c)AFP/Dan De Luce