【5月24日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は23日、ワシントン市内の国防大学(National Defense University)で政権2期目の対テロ戦略について演説し、批判されている無人機の運用を厳格化する方針などを示した。

 演説でオバマ大統領は、戦域を無限とせず、標的を絞った戦略を目指すとしながらも、自らの評価に直結する作戦の具体的な詳細や日程への言及はなかった。

 オバマ大統領が演説で触れなかった、または答えなかった重要な問題は以下の通り。

■グアンタナモ収容所の閉鎖

 キューバのグアンタナモ湾(Guantanamo Bay)にある米海軍基地内のテロ容疑者収容施設について、オバマ大統領は改めて閉鎖する方針を明言した。ただ、そのためのスケジュールについては、今後10年も20年もこの収容所があるような事態は米国の価値観と対極にあると述べるにとどまり、具体的に言及しなかった。

 政権1期目発足時、大統領としてのオバマ大統領の最初の動きの一つは、グアンタナモ収容所の1年以内の閉鎖を命じる大統領令だったが、それを実現できなかったことが今も汚点となっている。どうやらこの経験から「学んだ」ようだ。

■釈放なき拘束

 グアンタナモ収容所の被収容者の中には、釈放するには危険すぎる人物とみなされながら、拘束の根拠となる証拠が強制的な尋問から得たものであるため、法廷での採用が認められず、裁判にかけることができない者たちがいる。オバマ大統領は今回の演説の中で、こうした被収容者に対する措置も明確にしなかった。

 被収容者の大半が本国に送還されたとしても、そのうちの少数は、裁判が行われないまま無期限に拘束され続けることとなり、またそうした状況を管理する法的な枠組みもいまだ存在していない。オバマ大統領は、法の支配によって事態は解決されることに「自信を持っている」と述べただけだった。

■「テロとの戦い」はいつ終わる?

 範囲を拡大させているテロとの「果てなき」戦いは米国を自滅させると、オバマ大統領は警告する。国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)への忠誠を誓いつつ、その指令系統には属さない組織の急増や、米国育ちの「国産」テロリストに対処するために新戦略の採用が必要と訴えたが、2001年の米同時多発テロ以降続く「テロとの戦い」をいつ終えるかについては明確にしなかった。

■不透明部分の多い無人機攻撃

 今回の演説でオバマ大統領は、アルカイダや他のイスラム過激派組織に対する米軍の無人機攻撃をこれまでになく詳細に公にし、正当化したが、多くの問いには依然、答えていない。

 無人機攻撃による民間の犠牲者については「苛まれている」と認めたものの、どれだけの民間人が犠牲となっているかなどの詳細については明きらかにしなかった上、政府による評価と独立系団体などの評価には「大きな開き」があると主張した。

 また無人機による攻撃と疑われる事例について、今後ホワイトハウスや米国防総省が詳細を明らかにするかどうかも不明だ。政府報道官らはこれまで、パキスタンやイエメンなどの政府当局から寄せられる報告ついて、報道陣からの質問には一切回答を拒んできた。

 さらに、パキスタンを主とする無人機作戦の管轄を中央情報局(CIA)から米軍へ移管することの発表が一部では予想されていたが、おそらく情報機関による作戦は依然機密扱いであることから発表はなかった。(c)AFP/Stephen Collinson