【5月24日 AFP】メキシコ北東部の山岳地帯で、スペインに征服される以前の古代文明期に描かれた約5000もの洞窟壁画が発見された。当時の狩猟民族が描いたものとみられるが、この地域ではこれまで先住民の存在は確認されていなかった。

 大量の壁画が見つかったのは、米国と国境を接するタマウリパス(Tamaulipas)州ブルゴス(Burgos)の山岳地帯。洞窟や峡谷11か所で、計4926点の壁画が発見された。中でも、「馬の洞窟」と呼ばれる洞窟からは1550点を超える壁画が見つかった。

 メキシコ国立人類学歴史学研究所(National Anthropology and History InstituteINAH)によると、壁画には黄色や赤、白、黒などの顔料が使われ、人間や鹿、トカゲ、ムカデなどが描かれている。このことから、壁画を描いた人々は狩猟や漁などで食料を得ていたと考えられるという。

 また、宗教や天文学的なテーマを描いたとみられる抽象的な壁画もある。いずれも保存状態は非常に良いという。壁画が描かれた正確な年代は不明で、放射性炭素分析などを通じて時代の特定を試みるという。

 この壁画の発見について、サカテカス自治大学(Autonomous University of Zacatecas)の考古学者マルタ・ガルシア・サンチェス(Martha Garcia Sanchez)氏は「これまで先住民族はいないとされてきた地域から壁画が見つかったことで、ブルゴスにおける先住民族の存在を記録することができた」と、その重要性を指摘している。(c)AFP