【5月21日 AFP】シンガポールで昨年、米国人科学者が首をつって死んでいるのが発見された事件について、米検視局当局者は21日、シンガポールで開かれた検視官審問で証言し、事件は自殺にみせかけた殺人だと断言した。

 米ミズーリ(Missouri)州検視官助手のエドワード・アデルスタイン(Edward Adelstein)氏(75)は米国からの動画中継を通じてシンガポールで開かれた審問で証言し、シェーン・トッド(Shane Todd)氏が自殺したと断定したシンガポール警察当局の結論と真っ向から対立した。ただ、遺体の写真と事件の状況に関する情報だけで、殺人との判断を下したことを確認している。

 トッド氏の両親も審問で証言する予定だが、両親は、トッド氏がシンガポールの電子工学研究機関で行っていた仕事が原因で殺害されたと主張している。また、スパイ行為に関与したとして非難を浴びている中国企業も、トッド氏の仕事と関係していた疑惑が出ている。

「トッド氏の死因は、ひもを使った絞首だ。私は殺人と結論づける」と、アデルスタイン氏は声明で述べた。この声明文は審問に証拠として提出された。

 アデルスタイン氏はまた、トッド氏が2社のアジア企業にとって「極めて危険な人物」だったと述べ、証拠を提示することはなかったものの、「彼らがトッド氏を殺害した」と断言した。また、事件には訓練された「暗殺者」が関与した可能性もあると述べた。

 シンガポール当局は2週間の審問を通じて、6月末までにトッド氏の死因についてのみ結論を出す予定だ。

 トッド氏がかつて勤務していたマイクロエレクトロニクス研究所(Institute of MicroelectronicsIME)と中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ、Huawei Technologies)は、トッド氏とプロジェクトを進めていた事実を否定。だが、新たな研究所設立をめぐりトッド氏と事前協議を行っていたことについては認めた。

 米議会は昨年、華為技術と中興通訊(ZTE)を米国の安全保障上の脅威となり得るとして、米政府との契約や米企業の買収を禁止するべきだと報告していた。

 トッド氏は、レーダーや人工衛星通信の半導体に使うことのできる窒化ガリウムを研究するIMEの研究チームに所属していた。(c)AFP