【5月17日 AFP】欧州に住むレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)といった性的少数者の人々のうち、3分の2近くが自分の性的指向や性自認を公の場で明かすことを恐れており、4分の1が身体的暴力または言葉の暴力の被害を受けた経験があることが、17日に発表された欧州連合(EU)による報告書で明らかになった。

 EUの専門機関である欧州基本権機関(FRA)のモルテン・キャーロム(Morten Kjaerum)事務局長は報告書の中で「恐怖と孤立、そして差別は、欧州のLGBTコミュニティーにとって日常的な現象だ」と述べている。

「国際反ホモフォビアの日(International Day Against Homophobia)」に発表された報告書は、過去最大規模とされる調査の結果をまとめたもの。EU加盟27か国と7月に加盟するクロアチアの計28か国に住む計9万3000人がオンラインで回答した。

 過去5年の間に、身体的暴力または言葉の暴力を受けた経験がある人は、回答者の4分の1超に当たる26%だった。特に多くの被害を受けていたのはトランスジェンダーの人々で、ここ12か月間でトランスジェンダーであるという理由で攻撃や脅迫を3回以上受けた人は28%に上った。

 回答者の中には、たとえ昔から寛容度が高いとみなされている国々に住んでいても、周囲の態度が悪化していると答えた人もいた。

 2001年に世界で初めて同性婚を合法化したオランダでは、スポーツクラブや病院、新居探しや夜の外出、銀行といった場所で差別されたと感じたと答えた人は、ほぼ20%に上った。欧州全体の平均は32%だった。

 また、多くの回答者が警察への届け出を恐れていた。フランスでは4月、血まみれになった被害者の顔の写真が交流サイトで出回ったことをきっかけに、ゲイのカップルに対する暴行事件がメディアで大きく取り上げられている。

 さらに調査では、全回答者の3分の2、ゲイ男性の4分の3が、自身の性的指向を公の場で明かすのが怖いと答えた。

 また報告書は、差別は多くの場合、学校で始まると指摘している。回答者の3分の2が学校で自分の性的指向を隠していた。

 FRAは「LGBTの人々の不快な経験、社会的偏見、そして排除は多くの場合、学校で始まることを鑑み、(EU)加盟国は、LGBTの生徒たちが学校で安心できるよう対策を講じなければいけない」と述べている。(c)AFP