【5月7日 AFP】米動画共有サイトのユーチューブ(YouTube)は、インターネットに精通した新世代の音楽スターたちにとって強力な跳躍台となっている。

 米グーグル(Google)傘下のユーチューブからは、PSY(サイ)やマックルモア(Macklemore)、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)といったスターたちが世界の舞台に飛び出した。彼らは楽曲のデジタル・ダウンロードや満杯のコンサート、オンライン広告、スポンサー付き音楽ビデオなどで収益を上げている。

「音楽はいつだって世界共通の言語だった。そしてユーチューブは音楽のエネルギーの周りにコミュニティーを作る上で完璧なプラットホームだ」と語るのは、アーティスト御用達弁護士からユーチューブの音楽コンテンツパートナー部門責任者へと転身したビビアン・ルイット(Vivien Lewit)氏。「音楽は国境を超える。米国にいる人々も、韓国でPSYがやっていることにアクセスできる」とルイット氏は続ける。「彼だけじゃない。垣根は低くなり、その他のアーティストたちが地平線を押し広げた」

■広告収入をアーティストに、ファン投稿の動画からも収益

「江南スタイル(Gangnam Style)」でユーチューブの10億回再生を突破したPSYは、ユーチューブで新作「ジェントルマン(Gentleman)」を4月に発表。新作も5日までに2億7500万再生以上を記録している。

 本名をパク・ジェサン(Park Jae-sang)という35歳の韓国人ラッパー、PSYは江南スタイルの動画を活用して800万ドル(約8億円)以上の収益を上げたとされている。

 ユーチューブは人気ミュージックビデオの広告収入をアーティストと分割しているが、具体的な数字は明らかにしていない。

「数千人ものクリエイターたちが年間10万ドル(約990万円)以上稼いでいる」とルイット氏はAFPの取材に述べている。「(アーティストが)自分で投稿した動画からだけでなく、ファンがアップロードする度に利益が得られる」

 ユーチューブは、音楽の権利者に楽曲の参照ファイルの提供を認めている。この参照ファイルをもとに、ユーチューブのサイトは投稿動画の中から一致する動画をスキャンしている。一致する動画が見つかると、音楽の権利者は、その動画から広告収入を得るか、楽曲の視聴動向をトラッキング(追跡)するか、動画をブロックするかを決定することができる。

 ルイット氏によると、ユーチューブが過去2年で音楽業界に支払った広告収入は5億ドル(約500億円)以上に上った。

■「ユーチューブはマーケティング」、スターになった踊るバイオリニスト

 リンジー・スターリング(Lindsey Stirling)は、踊りながらバイオリンを演奏する動画をユーチューブに投稿し、無名の人からスターになった。

 米カリフォルニア(California)州出身の26歳のアーティスト、スターリングのユーチューブのチャンネルには、現在200万人以上のファンが登録している。

 昨年末に発売したデジタル・ダウンロードのセルフリリース・デビューアルバムは10万8000枚を売り、以来ほぼノンストップのツアーの真っ只中だ。欧州ツアーはすでに完売した。

「ユーチューブがなければ、私は今ごろツアーなどしていなかったでしょう」とスターリングは語る。「アルバムは出していたかもしれないけれど、買うのは母と祖母くらいだったと思う」

 広告からの収入もあるが、実質的な利益があるのはこうしたツアーと、米アップル(Apple)のiTunesショップでの売上だという。「広告からも多少お金は入るけど、あらゆるところに広めるためにユーチューブを使うことが肝心。ユーチューブは自分で構築できる無料のマーケティングプラットホーム」だとスターリングは述べた。(c)AFP/Glenn Chapman