【5月2日 AFP】ベトナム戦争時に乗っていたヘリコプターが撃墜され、以来44年間行方不明だった米兵が見つかった、というドキュメンタリー映画が今週公開され、話題を呼んでいる。ところが米国防総省によると、映画に登場する米兵とされる男性は、実はベトナム人だという。

 マイケル・ジョーゲンセン(Michael Jorgensen)監督のドキュメンタリー映画『Unclaimed(仮訳:引き取り手不在)』は、ベトナム戦争中に行方不明となり戦死扱いとなっていた米兵ジョン・H・ロバートソン(John H. Robertson)さんが、ベトナムで元気に暮らしており、姉と感動の再会を果たすという内容。

 しかし、AFPがベトナム・ハノイ(Hanoi)の米大使館を通じて米国防総省の戦争捕虜・行方不明者局(Defense Prisoner of War/Missing Personnel OfficeDPMO)から1日に入手した資料によると、DNA検査の結果、映画に登場するロバートソンさんとされる人物は、ベトナム国籍のDang Ngoc Than氏だと分かったという。

 映像制作会社「Myth Merchant Films」のウェブサイトで公開されている映画の予告編では、ロバートソンさんだとされる人物の顔ははっきり映されていない。

 DPMO資料は、問題の人物をロバートソンさんだとする主張や映像報告は全て調査したが、いずれも偽証だと確認されたとしている。それによると、ロバートソンさんが生存しているとの情報を得た後、2004年と09年に調査員が問題の男性に直接話を聞いた。指紋やDNAも採取し、保存されているロバートソンさんのものと照合したが、一致しなかったという。

 DPMOは、「最近公開された映画は、同じベトナム人男性を扱ったもので、この男性は現在も自分がロバートソンだと自称しているものとみられる」と結論付けている。

 1975年に終戦を迎えたベトナム戦争では、約6万人の米兵と300万人のベトナム人が命を落とした。米統合戦時捕虜行方不明者調査隊(US Joint Prisoners of War, Missing in Action Accounting CommandJPAC)によれば、うち1971人の米兵が行方不明となっている。

 ジョン・H・ロバートソンさんは1968年5月、搭乗していたベトナム軍のヘリコプターが地上からの砲撃を受け撃墜された。乗員は全員死亡したとされ、ロバートソンさんは1976年に死亡宣告された。

 制作者側は、『Unclaimed』について「詐欺行為をしたり、誰かの個人情報に関して事実を曲げたりする意図はない」と米SNSフェイスブック(Facebook)上で釈明している。(c)AFP