【5月2日 AFP】乳房インプラントによる豊胸手術は乳がんの診断を遅らせる可能性があるとする研究論文が1日、発表された。豊胸手術がもたらす健康リスクについての全面的な調査の必要性を訴えている。

 カナダの疫学者からなるチームは、乳がん患者を対象に行われた12件の先行研究の結果を再分析し、インプラントを入れた女性は乳がんの診断が後期まで遅れるリスクが26%高いことを発見した。また、別の5件の先行研究を再分析した結果、インプラントを入れた女性は乳がんで死亡するリスクが38%高かったという。

 これはおそらく、乳がん検査の一つである乳房X線撮影法(マンモグラフィー)で、インプラントがX線を遮断するなどして、乳房組織の撮影を妨げるからだという。

 一方で、インプラント自体が乳がん発症の原因であることを示唆するデータは得られなかった。また、インプラントによって胸のしこりが感じられにくくなることもなかった。チームは今回の発見について、対象となった先行研究の中には欠点があるものも存在した可能性があるため、注意して受け止めるようにとも述べている。

 分析対象とされた研究は、主に米国と欧州、カナダで1993年以降に発表された。

 英国美容外科医師会(British Association of Aesthetic Plastic SurgeonsBAAPS)のファゼル・ファタハ(Fazel Fatah)元会長は今回の分析結果を受け、「乳房インプラントを入れた女性の診断方法について、マンモグラフィーよりもMRI(磁気共鳴画像装置)などの方法が適しているかどうかを調べるための、さらなる調査が必要」と述べている。

 論文によると、米国では、8人に1人の女性が生涯のある時点で乳がんの診断を受けると推定されている。

 世界保健機関(World Health OrganisationWHO)によると、乳がんは女性で最も発症例の多いがんの種類で、毎年138万人が発症し、死者数は同45万8000人に上る。(c)AFP