【4月20日 AFP】 米ボストン(Boston)は19日、包囲下の街と化した。捜査員9000人がヘリコプターと装甲車両の支援を受け、ボストン・マラソン(Boston Marathon)爆発事件の容疑者1人を追跡する中、ボストン都市圏の数十万人の住民は自宅に閉じこもって恐怖の1日を過ごしている。

 18日夜に始まった警察の大規模な容疑者追跡劇は、銃撃戦と複数の爆発によって米国屈指の大都市圏を戦場へと変えた。

■「映画かと思った」

 タメルラン・ツァルナエフ(Tamerlan Tsarnaev)容疑者(26)とジョハル・ツァルナエフ(Dzhokhar Tsarnaev)容疑者(19)の兄弟が、警察と銃撃戦をしながらボストン郊外ウォータータウン(Watertow)まで逃走してきたとき、地元住民のジョナサン・クレスポ(Jonathan Crespo)さんはちょうど、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の最高指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者の追跡劇を描いた映画『ゼロ・ダーク・サーティ(Zero Dark Thirty)』を自宅で鑑賞中だった。

「婚約者がパトカーの音が聞こえると言ったとき、僕は彼女が映画にのめりこみすぎているだけだと思ったんだ。でも(その後)、僕も何台もの車が通り過ぎるのを見て、爆発音のような音も聞こえた」と、クレスポさんは話している。「震え上がったよ。こんなことが起きるなんて、思ってもみなかった」

 米連邦捜査局(FBI)に「容疑者1(Suspect One)」と名付けられたタメルラン容疑者が警察との銃撃戦で死亡したのは、その直後だった。この際、警察官1人が負傷した。

■銃撃戦が「行ったり来たり」

 別の住民、イボンヌ・アレイキブ(Yvonne Alaykib)さんは、暗闇の中で銃声とマシンガンの発射音を聞いたと証言している。「戦闘が起きているようだった。行ったり来たりして、とても怖かった」

 医師のデービッド・シェーンフェルド(David Schoenfeld)さんは、爆発音を聞いて職場であるベス・イスラエル病院(Beth Israel hospital)に急行し、救急救命室に運び込まれてきたタメルラン容疑者の手当てを担当した。銃撃と爆発で受けた傷は致命的で「運ばれてきたとき、既に危篤状態だった」と報道陣に語った。

■携帯メールで情報集め

 劇的な追跡劇の発端となった、容疑者2人による警官射殺事件が起きたボストン郊外ケンブリッジ(Cambridge)にある名門大学、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)では、学生たちが電気を消した研究室内に3時間にわたって隠れていた。

 ある女子学生は、そのときの様子を次のように話している。「いろいろなうわさを聞いた。ドアに鍵をかけて真っ暗な中に座り込んで、携帯電話のテキストメッセージで友達と連絡を取り合いながら、とにかくできる限りの情報を集めようとしていた」

 警察の特殊部隊(SWAT)がウォータータウンの周囲3.8平方キロメートル四方を封鎖し、1軒1軒しらみつぶしにジョハル容疑者の捜索を続けるなか、恐怖に震える住民たちは手配されたバスに乗って次々と町を脱出した。残った住民の自宅には警察が電話連絡をし、警察官以外には決して玄関を開けないよう呼び掛けた。(c)AFP/ Stan Honda