【4月19日 AFP】英国では今年800人以上がはしかに感染しているが、はしかのワクチンと自閉症を関連づけた論文の影響で子供に予防接種を受けさせない親が増えたことから、同国の200万人近い児童が無防備な状態にさらされていることを示す統計が18日、明らかにされた。

 英国の今年のはしかは、ウェールズ南部の街スウォンジー(Swansea)を中心に発生している。公衆衛生の専門家らはウイルスがさらに広がる危険性は深刻だとし、特に首都ロンドン(London)での流行について警戒している。

 英健康保護局(HPA)の統計によれば、同国のはしかの患者数は、1996~2012年まで毎年平均550人だった。しかし昨年はおよそ20年ぶりとなる2030件の報告例があり、今年はすでに808人が感染している。

■予防接種を受けるよう政府が呼びかけ

 保健当局が非難の矛先を向けているのは、1998年に英医学専門誌「ランセット(Lancet)」に掲載されたアンドルー・ウェークフィールド(Andrew Wakefield)医師の論文だ。この論文は、はしかとおたふく風邪、風疹の新三種混合(MMR)ワクチンと自閉症の関連を論じていた。

 ランセット誌は、報告にねつ造などの問題があったとして論文を全面撤回したが、この影響で英国の多くの親が子供に予防接種を受けさせていない。

 ロンドン大学(UCL)小児保健研究所(Institute of Child Health)のヘレン・ベッドフォード(Helen Bedford)医師は「子供たちがはしかにかかるだろうことは疑いない。何故ならばおそらく200万人にも迫る子供たちの巨大な集団が予防接種を受けておらず、感染しやすいからだ」と危惧する。中でも子供たちの半数近くが予防接種を受けていないロンドンが最も危険にさらされているという。

 英政府は親たちに子供に予防接種を受けさせるよう呼び掛けている。(c)AFP