【4月17日 AFP】2001年9月11日の米同時多発テロ以後、米国が拷問を行っていたことには「疑う余地がなく」、最終的な責任は当時の政権トップにあるとする独立調査報告書が16日、発表された。

 元議員2人が主導した577ページに上る超党派の報告書は、米情報当局と軍がアフガニスタン、イラク、キューバのグアンタナモ湾(Guantanamo Bay)にあるグアンタナモ米海軍基地、その他の場所で被収容者に拷問を行い、また「残虐で非人間的、下劣な」扱いをしたとし、米国の法と国際法に違反したと糾弾している。

 独立調査委の共同委員長、エーサ・ハチンソン(Asa Hutchinson)氏は「われわれは、拷問であることが明らかな行為を米国が実際に行っていたという、悔やまれるが避けられない結論にたどり着いた」と述べた。ハッチンソン氏は共和党の元議員で、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)政権の一員だった。

■他国が用いれば米国は非難

 法的権利擁護団体「コンスティテューション・プロジェクト(Constitution Project)」の支援による今回の独立委報告書は、米中央情報局(CIA)元高官数十人やその他重要人物に行った聞き取り調査を特徴とし、過去10年間の米当局による尋問記録に関する政府外の評価としては、これまでで最も包括的なものとなっている。上院が実施したこれよりも網羅的な調査の結果は依然公開されていない。

 報告書によると、9.11以後に用いられた尋問手法は有益な情報を得られなかった上、過去に他の国々が用いた際には、拷問や虐待であると米国が非難していた手法だった。

 もう1人の調査委共同委員長で、ビル・クリントン(Bill Clinton)政権下でメキシコ大使を務めたジェームズ・ジョーンズ(James Jones)民主党元議員は、拷問の容認は米国の価値観に反し「世界中で重要な同盟関係を構築するという米国の能力を大いに損なった」と批判した。

■ブッシュ政権と軍の最高レベル決定

 報告書によると、取調官による拷問があからさまに許可されたことは一度もなかったが、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)やアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)の戦闘員を、戦争捕虜の扱いを定めたジュネーブ条約(Geneva Conventions)の適用外としたことや、「価値の高い」被収容者に対し、CIAが残忍な尋問手法を用いることができるとした判断は、「米国の文民と軍の最高幹部らによる決定」の結果だったと指摘されている。

 また、ブッシュ政権の高官たちが、タイやポーランド、ルーマニア、リトアニアに設置された「ブラックサイト」と呼ばれる秘密収容施設で、被収容者の尋問に過酷な手法を用いることをCIAに許可したとも指摘している。特にドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)米国防長官(当時)は、グアンタナモ収容所において「睡眠剥奪、体に負担のかかる姿勢の強要、裸体状態の強要、感覚剥奪、イヌで拘束者を脅すなどを含む」尋問手法を認めた。この手法はその後、イラクでも導入された。

■秘密国外移送はクリントン時代から

 報告書の焦点はブッシュ政権だが、拘束した人物を国外に密かに移送することは、クリントン政権下でも行われていた点も指摘している。さらに調査委は、バラク・オバマ(Barack Obama)現大統領が、被拘束者らの扱いについて過度に非公開にしていることや、パキスタンやイエメンで無人機による空爆を実施している点も非難した。

 さらに拷問のまん延を許した米高官たちが、将来のテロ攻撃を防止するために善意からそうしたのだとしても、米国人はこうした事態が起きたことを認めなければならないと述べている。

 9.11後の拷問の使用と、第二次世界大戦(World War II)中の日系米国人の強制収容の類似も指摘し、「ある時点では理解可能で正当化しうると広く考えられた行動も、後に歴史的に後悔する出来事になりうる」と警告している。

 また報告書は、公的説明責任を完全に確保するために、上院情報委員会(Senate Intelligence Committee)の調査を含め、拷問の調査に関するCIAやその他の政府文書の機密扱い解除を求めた。

 11人からなる調査委の多数派は、グアンタナモ収容所に容疑者らを無期限に収容することは「許しがたく容認できない」と非難し、収容所の閉鎖を求めた。また現在グアンタナモでは、40人以上の被収容者が無期限収容に対して抗議のハンガーストライキを行っているが、報告書はオバマ政権に対し、ハンスト中の者に強制的に食事を与えることを止めるよう要求した。(c)AFP/Dan De Luce