【4月9日 AFP】巨大イカからUFOのような巨大クラゲまで、深海は長きにわたって人々を悩ませる謎を多く生み出してきた──東京の水族館には、そんな「謎」の一つ、透明な血液が体内を循環している魚が飼育されている。

 東京の葛西臨海水族園(Tokyo Sea Life Park)が飼育・公開している、透明な血液を持つ魚はコオリウオ科の1種、オセレイテッド・アイスフィッシュ(Ocellated Ice Fish、ジャノメコオリウオ)で、大西洋の凍てついた海の水深1000メートル付近に生息している。体温維持機能は他の魚と同じだが、血液は完全に透明。同水族館の専門家によると、赤血球中にヘモグロビン(赤色素)が含まれず、脊椎動物としては非常に珍しいという。好奇心を刺激する、このうろこのない魚を飼育しているのは、世界中で同水族館だけだ。

 同水族園飼育展示係の多田諭(Satoshi Tada)氏によれば、オセレイテッド・アイスフィッシュについての詳細はほとんど知られていない。ただオキアミ漁の漁船が持ち帰ったオスとメスによる産卵が1月に成功しており、飼育する個体が増えることで、謎の解明に役立つことが期待される。

 ヘモグロビンがなくてもこの魚が生きていられるのは、心臓が大きく、また血漿によって酸素を循環させているためと考えられており、また皮膚からも酸素を吸収できるとみられている。しかし、なぜヘモグロビンを失い、血液が透明になったかという進化のメカニズムについては解明されていない。(c)AFP