【4月4日 AFP】オマル・ラズーキさんは木製の箱を熱心に見つめる。ラズーキさんら、サハラ(Sahara)砂漠の遊牧民たちが日々直面している水問題の解決策になるかもしれないその箱に驚きながら。

 英国の非政府組織(NGO)「ウオーターエード(WaterAid)」が「世界水の日」に合わせて発表した報告書によると、サハラ以南アフリカの人口の40%にあたる3億3000万人以上が安全な飲料水を入手することができないでいる。

 世界保健機関(World Health OrganisationWHO)は、下痢に関連した死亡の9割近くが、この飲料水不足が原因と推計している。

 サハラ砂漠では、水不足に最も苦しんでいるのは遊牧民らだ。特に、最も暑い季節には井戸の水の塩分濃度が上がり、飲むことが出来なくなる。

■簡単な装置で蒸発と凝結

 3月にモロッコ南部の砂漠地帯マハミド(M'Hamid)で開催された「ノマディックフェスティバル」は、持ち運び可能な浄水装置の開発者にとって、その発明品を披露する格好の機会になった。

「シンプルだ。雲の凝結という自然のサイクルを模倣したものだ」と、アライン・チボーさんは説明する。元船乗りのチボーさんは、海の上で淡水不足という問題に立ち向かわなければならなかった。その経験から数年前、「製造が簡単で利用も簡単な小型の機器」だけを使って雲の凝結過程を再現するアイデアを思いついた。

「ウオーターポッド」は、蒸発と凝結を通じて井戸水をきれいな飲料水に変える。使うのは太陽の熱だけだ。形は大型の郵便箱に似ており、現在の価格はおよそ500ユーロ(約6万円)。だが、この装置の発明者たちは、すでにモロッコ大西洋岸のティズニト(Tiznit)の大学で、より低価格にこの装置を作る方法を学生たちに教えている。

「ウオーターポッドは木、コルク、ステンレス、ガラスで出来ている」と、モロッコで水プロジェクトの推進を手伝っているティエリー・モーブッサン氏は語る。「太陽エネルギーで動くから化石燃料は使わないんだ」

 ノマディックフェスティバルの代表を務めたNoureddine Bourgab氏も、この装置の環境保護的な価値を評価し、「砂漠の遊牧民たちの塩水問題を解決」する可能性があると期待を寄せた。「持続可能な発展と環境保護を真の意味で具現化した技術だ」

■ダムと砂漠化で深刻化した水不足

 マハミド地域の遊牧民、ラズーキさんは、ウオーターポッドの仕組みを理解しようと集中していた。

「これは水問題の多くを解決してくれるかもしれない」とラズーキさんは語り、装置は軽く、「塩水の問題には、どこに行っても悩まされることはないだろう」と述べた。

 モロッコのサハラ砂漠への玄関口のマハミドは、砂丘に囲まれたドラア(Draa)谷の端に位置するオアシス。40年前に、人口増加と観光客増加を受けて谷の上流に水力発電用のダムが建設されたことと、砂漠化の進行により、水の供給量が大幅に減少した。

 ゆえに、ウオーターポッドに対する期待も大きい。制作者らによるとウオーターポッドは1日に12リットルの塩気を帯びた水から、6リットルの淡水を作ることができる。製品寿命は20~40年と見積もっている。製品状態を保つために必要なのは毎日のクリーニングだけだという。(c)AFP/Jalal al-Makhfi