【4月3日 AFP】フランスの人気リアリティー番組に出演していた医師が1日に自殺したことを受け、仏国内ではメディアの圧力が自殺の原因だとする声や、リアリティー番組全体への規制を求める声が高まるなど、波紋が広がっている。

 問題の発端となったのは、出演者たちが島での生き残りをかけて戦う人気番組「コー・ランタ(Koh Lanta)」。米人気リアリティー番組「サバイバー(Survivor)」の仏版で、平均700万人が視聴する人気番組だったが、先月22日、カンボジアのロン島(Koh Rong)で始まった最新シーズンの撮影初日に、出演者のジェラール・ババン(Gerald Babin)さん(25)が心臓発作で死亡したことから、仏民放テレビTF1は2013年シーズンの放送中止を決定。リアリティー番組の撮影中に出演者が死亡するのは仏テレビ史上初めてで、同番組の運営体制を疑問視する声が上がっていた。

 こうした中、ババンさんの死から約1週間後の今月1日、番組に出演していた仏人医師ティエリー・コスタ(Thierry Costa)氏が、メディアから「不当な非難」を受けていると訴える遺書を残し、カンボジアで自殺した。番組出演者から2人目の死者が出たことで、仏国内で圧倒的な人気を誇るリアリティー番組をめぐる議論が沸騰している。

 ババンさんの家族の弁護士、ジェレミー・アスー(Jeremie Assous)氏は日刊紙パリジャン(Le Parisien)との2日のインタビューで、リアリティー番組には「労働面での多くの法律違反に加え、衛生基準・安全の面での違反」があると厳しく非難。「コー・ランタ」の撮影には出演者と制作チーム合わせて150人が参加していたのに、医師は1人しか同行していなかったことに疑問を呈している。

 フランスでは過去にも、リアリティー番組の出演者が番組終了後に自殺を図った例が複数あり、死者も出ている。仏視聴覚最高評議会(Conseil Superieur de l'Audiovisuel)のメンバーでもあるジャーナリストのフランソワーズ・ラボルド(Francoise Laborde)氏は、仏ラジオ局ヨーロッパ1(Europe 1)の番組内で、リアリティー番組に対する監視体制の強化が必要だとの考えを示し、出演者の精神状態を監視する心理学者の採用を義務づけることも考えられると述べた。

 カンボジア当局はババンさんの死を自然死と判断しているが、仏当局は「過失致死」の可能性も念頭に置き、予備調査を開始。警察は今後、番組出演者と制作会社アドベンチャー・ライン・プロダクションズ(Adventure Line ProductionsALP) の担当者を事情聴取する方針だ。 (c)AFP/Marianne Barriaux