【3月26日 AFP】陸上男子短距離と走り幅跳びで伝説を残したカール・ルイス(Carl Lewis)氏が25日、都内で行われた記者会見で、アジア各国の陸上界が世界レベルに発展するには「ヒーロー」が必要だとの見解を示した。

 24日に東日本大震災の被災地を訪れて子供たち向けの陸上教室を開いたルイス氏は、「私の少年時代、(米国には)ヒーローがいた。真似したいと思うアスリートがいたし、そうした存在が重要だ」と語った。

 また、「アジアにはこれだけ多くの人口がいて、なぜ1人でも速い選手が出てこないのか。20億人近くいるのに理屈に合わない」と51歳のルイス氏は前置きした上で、「偉大なアスリートがいれば、その選手をモデルにいいアスリートが成長する」と続けた。

 ルイス氏は1983年から1996年にかけて夏季五輪の陸上で金メダルを計9個、世界選手権で8個の金メダルを獲得している。今回、陸上競技界の元スター選手でアフリカ系米国人のウィリー・バンクス(Willie Banks)氏とマイク・パウエル(Mike Powell)氏と共に被災地で陸上教室を開催した。

 記者会見では、アジア勢が2012年のロンドン五輪の陸上競技でなかなか決勝に残ることができなかった事実について、歴史や人種の違いが影響しているのかという質問が投げかけられた。陸上競技全47種目のうちアジア人選手が金メダルに輝いたのはわずか2種目だった。

 これに対し57歳のバンクス氏は、「文化的な要素は大きい」と認めた。バンクス氏は、1985年に三段跳びで17メートル97の世界記録を樹立し、10年間その記録を保持した。

 一方、1991年に東京で8メートル95を記録して走り幅跳びの世界記録を更新し、現在も記録保持者である49歳のパウエル氏は、米国で自身が指導する白人選手に、ある選手に勝てない理由は相手が黒人だからだと言われたエピソードを引き合いに出した。

「私は彼に『そんなこと言うな。肌の色は関係ない』と言った。すべての黒人が速く走れるわけではない。すべての黒人が高く跳べるわけではない。すべての黒人がうまく踊れるわけではない。だが、一握りの人はできる。それは本人の努力次第だ」

 パウエル氏は1991年と1993年の世界選手権で優勝、1988年と1992年の五輪では銀メダルに輝いている。

 陸上教室は2020年夏季五輪の開催を目指す東京都の招致活動の一環として開催された。東京は招致レースでスペインのマドリード(Madrid)、トルコのイスタンブール(Istanbul)と争っている。

「昨日会った子どもたちの瞳に希望と夢を見た。『自分の国で五輪が開催されたらすごい。自分も頑張らなくちゃ』という子どもたちの言葉からエネルギーを感じた」とルイス氏は訪問を振り返った。(c)AFP