【3月26日 AFP】アフリカ西部セネガルにある中国企業運営のピーナツ倉庫は高い壁で守られている──。セネガルでは現在、ピーナツが地元の業者を通さずに直接外国の業者と高値で広く取引されており、農民たちにとっての新たな「黄金」となりつつある。

 同国中部に位置する、通称「ピーナツ盆地」にある村、ディンギラエ(Dinguiraye)へと続く道のふもとにはピーナツの皮むき工場がある。ぽつぽつと木が生える乾燥したサバンナの草原に建てられた工場が周辺の景色に溶け込むことはない。

 「中国に売るほうがいい。1キロ当たり250~260フラン(約46~48円)。市場では時に300フラン(約56円)まで上がることもある」と生産者のウマル・ティアムさんは語る。セネガル政府が規制している最高値190フラン(約35円)を大幅に上回る。「ピーナツ価格がここまで上がったのは初めて。中国のおかげだ」とも述べた。

 近くの村では現場監督の下、女性たちがピーナツの仕分け作業を行っていた。現場監督たちの中には中国人もいる。セネガル人の主任からは「作業員たちの撮影は厳禁」だと言い渡された。

 外国人の買付業者たちがあまり取引の内容について話したがらない中、ある中国人の現地責任者は取材に対し、「農家からピーナツを買って殻をむいてから中国やロシア、フィリピン、マレーシアに売っている」と語った。

 植民地時代にフランス入植者が持ち込んだピーナツ。油や粉、ペーストとして、セネガルの代表的料理といわれるチェブジェン(米と魚の意)をはじめ多くの料理に使われる他、油を搾った後のかすは家畜の餌に、殻は燃料になる。また経済面でも主要な換金作物として大きな役割を果たしており、国民の約6割になんらかの形で雇用をもたらしている。

■一部の地元産業には打撃

 近年は降雨量減少による水不足と価格の下落で生産量が落ちていたが、約3年前に規制が緩和され、輸出が可能になった。しかし中国の買い手の関心が高まっていることから、今度は高騰が懸念される。

 貿易業を営むハビビ・ティアム氏は、「外国の買い手がたくさんいるので、生産者らは法律なんて守らなくなっている。昔は製粉業者にとって黄金だったピーナツが、今は小規模農家にとっての黄金になりつつある」と苦言を呈した。

 かつて製粉業者は生産者からピーナツを安価で買いたたき、加工製品を売って大きな利ざやを稼いでいた。しかし外国の買い手がセネガルのピーナツ市場に殺到し始めると、今度は製粉業者が生産者からピーナツを入手しづらくなり、苦しい立場に置かれることになった。

 製粉業者組合会長のボウバ・アー氏は、「われわれの工場にとって今年はひどい年だった。この不健全で不公平な外国(業者)との競争のせいで、工場が稼働するのは12か月のうち一月だけだ」と嘆く。「終身雇用2000人を含む約5000人を雇っている国内の製粉業者に優先的に(ピーナツを)供給する法律を作るべきだ」と訴える。それにピーナツ市場を開放すれば輸出ばかりが増え、種子が手に入りにくくなるという問題が生じるとも警戒している。

 ただ生産者のエルハジ・ンディアイさんの考えは違うようだ。「セネガルの生産者は19世紀からピーナツを栽培してきた。常に種子を手に入れてきたし、手元の予備分も常に切らさないようにしている」

(c)AFP/Malick Rokhy Ba