【3月23日 AFP】2014年サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)欧州予選は22日、各地で行われ、グループAのクロアチアは2-0でセルビアから勝利を収めた。

 1990年代に起きた旧ユーゴスラビア連邦人民共和国の崩壊により独立した両国が、崩壊後初めて対戦する一戦とあって開始から緊迫感を漂わせていた。

 クロアチア代表はクロアチア語で炎を意味する「ヴァトレニ(Vatreni)」の愛称で知られており、試合会場のマクシミール・スタジアム(Maksimir Stadium)には約3万4000人の観衆が集まり、スタンドはクロアチアの国旗や赤と白のチェック柄の代表ジャージに身を包んだ熱狂的なサポーターで埋め尽くされた。

 試合に勝利したクロアチアは予選突破に大きく前進し、敗れたセルビアは本大会出場への可能性が一気に遠のいている。

■クロアチアのサポーターを静かにさせたマンジュキッチの先制ゴール

 事前の協議の結果、サポーター同士の衝突を避けるため、アウェー側のサポーターの入場を禁止することで両国のサッカー協会が合意しており、この試合ではセルビアのサポーターは入場を制限されていた。9月6日にセルビアで行われる試合ではクロアチアのサポーターは会場で応援することができない。

 以前から両国の代表選手や関係者は、ファンに対して強硬手段に訴えることなく「品位」を持って応援するよう繰り返し求め、サポーター間の緊張緩和に努めていた。

 セルビアに対する批判的なチャントが起きれば試合を中止するという警察からの警告が事前にあったにもかかわらず、試合開始時には暴言が聞かれ、ザグレブ(Zagreb)市内や電車内などでもたびたび攻撃的な行動が見られた。

 なかには「セルビア人を殺せ!」といった過激発言も飛び出したが、前半23分にクロアチアのマリオ・マンジュキッチ(Mario Mandzukic)が先制ゴールを奪うと、間もなくしてチャントはやんだ。

 混乱が懸念されていた因縁の一戦にあたっては厳重な警備態勢が敷かれたが、試合を終えて目立った衝突は報告されていない。

 クロアチアは前半23分にセルビアのアレクサンドル・コラロフ(Aleksandar Kolarov)のミスからマンジュキッチのゴールで先制すると、同37分にはダリオ・スルナ(Darijo Srna)のお膳立てからイビカ・オリッチ(Ivica Olic)が追加点を挙げた。

 迎えた後半、反撃を仕掛けたセルビアは何度か得点チャンスを作り出したものの、クロアチアの守護神スティペ・プレティコサ(Stipe Pletikosa)が素晴らしい仕事を見せ得点を許さなかった。

 クロアチアは26日にウェールズと対戦する。

■クロアチアとセルビアで注目を集めた「歴史的一戦」

 両国による因縁の対戦は数週間前からメディアの話題を独占しており、現地の試合開始時間午後6時に合わせて午後の授業を切り上げる学校もあった。

 1991年から1995年にかけて勃発したクロアチア紛争では、旧ユーゴスラビア連邦からの独立を目指すクロアチアが、独立に反対していた中央政府の後ろ盾を受けるセルビア人勢力と衝突して戦いが起きた。

 旧ユーゴの崩壊当時に比べると徐々に両国の関係は改善されているものの、各国代表が争うスポーツの国際大会ではいまだに警戒を緩めることができない。特にバルカン地域のサッカー界は、今でも超国家主義者のフーリガンに悩まされている。

 試合のチケットは完売していたが、規制を無視したセルビア人が会場入りすることを恐れた警察は国境での入管規制を強化し、ザグレブへの進入経路における警備を強めた。

 試合会場のマクシミール・スタジアムは、1990年5月にディナモ・ザグレブ(Dinamo Zagreb)とレッドスター・ベオグラード(Red Star Belgrade)のファンの間で暴動が起きたことが有名である。(c)AFP/Lajla VESELICA