【3月21日 AFP】地中海の小国キプロスの金融支援をめぐって混乱が広がっている問題で、欧州中央銀行(European Central BankECB)は21日、ユーロ圏などが提示した支援計画に25日までに同意しなければキプロスの銀行に対する緊急資金援助を止めると警告した。一方、キプロス政府が直接支援を要請したロシアのドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)首相は同日、ロシアがキプロスに持つ口座も凍結されていることに苦言を呈している。

 ユーロ圏各国と欧州中央銀行(European Central Bank)、国際通貨基金(IMF)は前週16日、キプロスへの100億ユーロ(約1兆2000億円)規模の金融支援に合意する条件として、キプロスの全銀行預金に対して1回に限り最高9.9%の税金を課し、計58億ユーロ(約7200億円)を調達するよう求めた。

 だが、キプロス議会は19日、この救済計画を受けた預金課税法案を否決。政府が各政党指導者や中央銀行幹部と共に修正案協議に奔走する中、キプロス財務省は取り付け騒ぎを回避するため前週15日を最後に営業していない国内の銀行に対し21日、22日の両日も休業するよう命じた。

 キプロスのミハリス・サリス(Michalis Sarris)財務相は20日、露モスクワ(Moscow)でアントン・シルアノフ(Anton Siluanov)露財務相、イーゴリ・シュワロフ(Igor Shuvalov)同第1副首相と会談し支援を要請したが、具体的な成果は得られなかった。交渉は21日も続く見込みで、キプロス側はロシアから2011年に借り受け、2016年に返済期限を迎える25億ユーロ(約3100億円)の債務についても返済条件の緩和を求めたい構えだ。

 しかし、メドベージェフ露首相は21日早朝、露政府ウェブサイトに掲載されたインタビューの中で「わが国の多くの組織がキプロス(の口座)を通じて動いているのに、不明確な理由によってその預金が封鎖されている。政府機関も含めてだ。従ってキプロス周辺で生じている事態と規制に関し、わが国は『断固とした姿勢』で臨まざるを得ない」と述べた。キプロスにおけるロシアの民間・企業の預金額は約310億ドル(約3兆8400億円)に上る。

 キプロスでは、20日時点でATM(現金自動預払機)では依然引き出しが可能だが、ガソリンスタンドでクレジットカード端末機が閉鎖されたり、多くの商店が小切手での支払いを受け付けないなど、すでに流動性に支障をきたし始めている。

 一方、国営ラジオは、銀行の営業開始後も現金の国外流出を制限する草案が策定されていると報じている。(c)AFP