【3月19日 AFP】中南米出身者としては初のローマ法王となったフランシスコ1世(Francis)は、13日にサンピエトロ広場(St Peter's Square)で初めて信者らの前に姿を表したその歴史的な瞬間から、生き生きとしたユーモアのセンスを発揮し続けている。

 76歳の新法王は、笑顔で手を振りながら「同胞の枢機卿たちは、新しい法王を見つけるのに世界の果てまで探されたようですね!」と語った。この気さくなスタイルはすでに、全世界のカトリック教徒12億人の新たな指導者となったフランシスコ1世のトレードマークになりつつある。

 その後の晩餐の席でも枢機卿らに対し、「あなた方のなされたことも、神はお許し下さいますよ!」と話した。またその夜、友人のイタリア人ジャーナリストと電話で交わした会話で、呼びかけの際の言葉を「父」から「聖なる父」に変えるべきか、と問われると、大声で笑い出したという。

 バチカン専門家のマルコ・ポリティ(Marco Politi)氏によると、フランシスコ1世は「非常にリラックスしていて、公衆の面前でも私生活と変わらない振る舞い」をする。常に自然体で、「自分らしくあろう」と心に決めている様子だという。

 また、17日にサンピエトロ広場に集まった信者に向けては、ドイツのワルター・カスパー(Walter Kasper)枢機卿の著作からの言葉を引用した後、「枢機卿たちの本を売り込んでいると思わないでくださいね。そういうわけではないですからね」とおどけてみせた。

 さらに、過去にアルゼンチン人の高齢女性から「もし神が私たちの罪を許していなかったら、世界は存在していなかったでしょうね」と言われた時のことを回想し、「彼女に『グレゴリアンで学んだのですか?』と聞き返しそうになりましたよ」と語った。グレゴリアンとは、イタリアの首都ローマ(Rome)にある、カトリック教会の指導者を養成するグレゴリアン大学(Pontifical Gregorian University)のことで、法王が所属するイエズス会が運営している。

 タンゴ好きでも知られるフランシスコ1世のユーモアは、その前日に行った記者会見でも輝きを放っていた。用意されていた原稿から目を離したフランシスコ1世は、部屋に集まった記者らを見回し、「随分と働きましたね。そうでしょう?よく働きましたとも!」と語りかけた。

 また、本来なら極秘事項であるはずの、枢機卿らによる法王選出の審議に関する情報を幾つか明らかにし、これまでの法王とは一線を画す人物であることを示した。

 自身が新ローマ法王に選出されつつあると気づいた瞬間について、「物事が、ちょっとばかり危険になり始めた時でしたね」と皮肉ってみせた。また、法王名についての内輪なジョークで、ある司祭から「イエズス会士らの恨みを晴らすために『クレメンス15世』と名乗ることもできたのに、なぜしなかったのか」と聞かれたことも明かした。クレメンス14世(Clement XIV)は、1773年にイエズス会の解散を命じたローマ法王だ。イエズス会はその後、40年以上も再結成されることはなかった。

 また別の機会では、世界から集まった枢機卿らに対し、自分たちは皆「年老いた者」ではあるが、それは知恵を持っているということだと語りかけ、これを「良いワインは年月を重ねて味を増す」と表現した。(c)AFP/Dario Thuburn