【2月26日 AFP】多数の女性を誘拐し、その体を食べる計画を立てていたとして米ニューヨーク(New York)の警察官が逮捕・起訴された事件の公判が、同市の裁判所で25日に開かれた。検察側の証人として出廷した被告の妻は、夫がインターネット上で自分を拷問し、殺害する計画を話し合っていたと証言した。

 証言台に立ったキャスリーン・マンガンバーレ(Kathleen Mangan-Valle)さん(27)は陪審団に対し、夫のジルベルト・バーレ(Gilberto Valle)被告(28)は「人肉を食べる」欲望を持っていたと証言した。

■「妻の喉をかき切り、血の流れ出すのを眺める」計画

 被告にかけられた罪状にはおぞましい内容が含まれるため、裁判所は陪審員候補選定の際、リンゴを口に詰め込まれた女性が料理用プレートの上で縛られている写真を見せて、過激な性的空想についての見解を問う必要があった。

 マンガンバーレさんは、ある日、夫が暴力的な性的フェティシズムの専門サイトを訪問していることに気付いたと証言。ニューヨーク市警(NYPD)で勤続6年だったバーレ被告と妻との間には当時、幼い娘がいた。

 夫のコンピューターの中から、深夜にネット上でやりとりされていた恐ろしい画像を発見したことから、マンガンバーレさんは娘を連れて家から逃げ出すことを決意したと、何度も涙を流しながら語った。

「トップページに写っていた女の子は死んでいました」とマンガンバーレさんは証言し、夫が閲覧していた別のウェブサイトには「切断された脚の写真」が掲載されていたと述べた。さらにパソコンを詳しく調べたところ、バーレ被告は他の「死体ポルノ」愛好家仲間と「幾千もの電子メール」をやりとりしており、自分を含む複数の知人の写真を送信していたことを知ったという。

「私の目の前に突然、自分の写真や、友人の写真が表示されました」とマンガンバーレさんは述べ、ネット上で話し合われていた犯行計画の1つには「私の手首と足首を縛り、喉をかき切って血が流れ出すのを眺める」計画が書かれていたと証言した。

 証言中、動揺が抑えきれなくなったマンガンバーレさんは、法廷の外で気持ちを整理させることを許された。バーレ被告は頭を手で覆い、被告人席に座っていた。

■弁護人「被告は空想していただけ」

 バーレ被告は、誘拐を共謀したとの罪状について無罪を主張している。弁護人のジュリア・ガット(Julia Gatto)氏は検察側の主張に対し、被告人は「空想」をしていただけだと反論。バーレ被告の性的な好みは「非常に異様」なものだとしつつも、実際には家庭的な人物だったと弁論した。また、被告がおぞましい構想のやりとりをしていたウェブサイトには3万8000人が登録しており、こういった人々は全て空想を楽しんでいるだけとした。

 だがランドール・ジャクソン(Randall Jackson)主任検事はこの主張が「完全に偽り」であると一蹴。被告が実在する女性たちを標的とし、ある時は「女性をどうやってオーブンに入れるかについて議論していた」と指摘した。

■幸せな日々を思い号泣

 弁護人のガット氏は、被告が危険人物ではないことを示すため、夫婦の幸せな日々を撮影した写真を提示した。そのうちの1枚には、警察官の制服を着たバーレ被告が、病院で生まれたばかりの赤ちゃんを抱いている姿が写されていた。

 これらの写真を見た夫婦はその場で泣き崩れた。バーレ被告は被告人席のテーブルうなだれて涙を流し、証言台に立つマンガンバーレさんは言葉も発せないほど激しく号泣した。

 バーレ被告には、誘拐の共謀と、標的の女性の情報取得を目的とした警察データベースの不正使用の疑いがかけれている。誘拐の共謀で有罪となれば、最高で終身刑が科される可能性がある。(c)AFP/Sebastian Smith