【2月26日 AFP】19日に西アフリカ・カメルーンで誘拐されたフランス人家族を撮影した動画が25日、動画共有サイトのユーチューブ(YouTube)に投稿された。イスラム過激派「ボコ・ハラム(Boko Haram)」のメンバーだと名乗る誘拐犯は動画の中で、捕らえられている仲間の解放を要求した。

 カメルーン在住のこの家族は、19日にワザ自然公園(Waza National Park)を訪れていた際に誘拐された。カメルーン当局によると、その後国境を越えてナイジェリア北東部へ連れ去られたとみられている。誘拐後にこの家族の映像が公開されたのは初めて。

 長さ3分強の動画に写っていたのはタンギー・ムーランフルニエ(Tanguy Moulin-Fournier)さんとその妻、そして5~12歳の息子4人の家族と確認された。また誘拐当時、一家と共に休暇を過ごしていたタンギーさんの兄弟のシリル(Cyril Moulin-Fournier)さんも写っていた。動画の中では少なくとも3人の覆面をした人物がタンギーさんたちを取り囲んでいた。動画が撮影された場所や日時は不明。

■フランスのマリ軍事介入を非難

 ボコ・ハラムを名乗る犯行グループは、この家族を誘拐した理由の1つにフランスが「イスラムに対する戦争」を行っていることを挙げた。仏軍のマリ介入を指しているとみられる。

 犯行グループの1人はナイジェリアのグッドラック・ジョナサン(Goodluck Jonathan)大統領に向けて、「これらフランス人を解放してほしければ、拘束しているわれわれの女性らを即座に解放せよ」とアラビア語で述べた他、カメルーン政府に対し「われわれの兄弟たち」の解放を要求した。

■身代金目的との見方も

 タンギーさん一家は2011年秋にカメルーンの首都ヤウンデ(Yaounde)に引っ越し、タンギーさんはそこで液化天然ガスプラント建設を監督する仕事をしていた。シリルさんはスペイン・バルセロナ(Barcelona)在住。専門家の間では犯行の背景に身代金目的の犯罪集団がいるという見方も出ている。

 フランス政府は今回の誘拐はボコ・ハラムによるものだという姿勢を崩していないが、犯行グループが本当にボコ・ハラムに属しているかどうかはまだはっきりしていない。ボコ・ハラムはナイジェリア北部・中部で長年、暴力的な襲撃を繰り返してきたが、誘拐事件で犯行声明を出したことはこれまでに全くなかった。

 ボコ・ハラムがこれまでに投稿した動画のほとんどでは、リーダーとされるアブバカル・シェカウ(Abubakar Shekau)という男が登場し、ナイジェリア北部で広く使われているハウサ語(Hausa)で話していた。

 ボコ・ハラムの派生組織で、ここ数週間で存在感を増してきた「アンサル(Ansaru)」は、12月にナイジェリア北部でフランス人1人が誘拐された事件や、ナイジェリアの北部バウチ(Bauchi)州の建設現場で今月16日に外国人7人が誘拐された事件で犯行声明を出すなど、外国人の誘拐を主要戦略としてきたようだ。アンサルもフランスのマリへの軍事介入などを非難している。(c)AFP/M.J. Smith