【2月21日 AFP】3Dプリント技術を使って見た目も機能も本物とほとんど変わらない人工耳の作成に成功したと、米コーネル大学(Cornell University)の研究チームが20日、米オンライン科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に発表した。事故や病気で耳を失った人々や、先天性小耳症の子どもたちの耳の治療への実用化が期待される。

 コーネル大学の生体工学者とワイル・コーネル医科大学(Weill Cornell Medical College)の外科医からなるチームはまず、実在の人物の耳のデジタル3D画像を取得し、これを基に3Dプリンターで型を作成。コラーゲンと軟骨細胞をこの型に注入し、型を取り除いた後、コラーゲンの上で軟骨組織を培養したところ、3か月で軟骨が形成されたという。

 研究チームは、この手法で人工耳を作成するのに必要な時間の短さを高く評価している。耳の型を取るのに半日、3Dプリントに約1日、ジェル注入に30分、そのわずか15分後には人工耳を取り出せる。その後、形を整え培養液の中で数日間培養すれば、移植が可能という。

 ワイル・コーネル医大のジェーソン・スペクター(Jason Spector)准教授は、移植される患者本人の細胞を使えば拒絶反応の危険も減らせると指摘。早ければ3年以内にも臨床移植を行えるようになるとの見通しを示した。

 従来の人工耳は発泡材のような硬度の素材か、患者自身の肋骨(ろっこつ)から作られるが、見た目が不自然で機能面でも本物には劣る。そのため移植にはしばしば痛みを伴い、特に患者が子供の場合はつらい思いをすることも多かった。(c)AFP