【2月18日 MODE PRESS】ファッションと音楽、アートなどを融合したユニークな発信で人気急増中のブランド「メゾン キツネ(MAISON KITSUNÉ)」の路面店が2月15日、東京・南青山にオープンした。パリに本拠を置き、黒木理也(Masaya Kuroki)が服やアクセサリー類など、ブルターニュ出身のフランス人ジルダ・ロアエック(Gildas Loaéc)が音楽レーベルのディレクターを主に担当し、ブランド設立は2002年。路面店はパリ、ニューヨークに次いで、3店目になる。「タイムレス」をブランドコンセプトに、シンプルだが長く着られる高品質なもの作り、そして音楽も含めジャンルを超えて新たな世界観を提案しようとするスタイルが特徴的だ。出店のために来日した二人に話を聞いた。

―世界で3番目ということになる東京の店の狙いは?

「僕の母国である日本のお客に、自分たちの世界観を知っていただくためです。伝統技術やクラシックなものへのリスペクトを表現するために、店には日本の伝統的な建築要素や職人技術の素材を多く取り入れた。たとえば、熟練職人に発注した畳や日本杉の寄木細工、米と竹の紙で作った襖(ふすま)など。併設したCAFÉ KITSUNÉは茶室をイメージして、竹の垣根のアプローチや低い天井、アンティーク家具を配置した。それらが商品のモダンさと溶け合って独自な表現になる」(マサヤ)

―位置としての東京とは?

「世界的には、これからはアジアの時代。その中で、東京は一つの大きな真珠のように輝く存在なのだと思っている。だから東京でどんな店を作ってどう受け入れられるかは、Kitsuné全体のブランディングともかかわっている。伝統と現代的アプローチが加わって、ユニバーサルでありながら絶えず新たなインスピレーションを与え続けるブランドでありたい」(マサヤ)

―シンプルなのにハイクォリティーで、毎日でも着たくなる。そんな商品作りのポイントとは?

「ノーマルだが緊張感のあるものを目指しています。そのためには、まず素材の良さが大切。自分で世界中の素材産地に行って探し回る。デザインはトレンドや奇抜さよりもなるべくシンプルに。それによって着た時の落ち方に変化が出る。そんな服なら長く着てもらえると思う」(マサヤ)

―ジャンルの違う二人が、どうして同じコンセプトのクリエーションを生み出せるのか?

「お互いに何をどう感じていて、何を考えているのか、まるで兄弟のように分かるから。共通点をあえて言えば、音楽にしても服にしてもクオリティーをなによりも重視すること。そして、ディテールにこだわること。そのためには、二人とも手間ひまを全然惜しまないし」(マサヤ・ジルダ)

―品質や作る手間ひまを考えれば、価格はそれなりに高くなるが?

「クォリティーではエルメスやシャネルにも負けないくらいのつもりだが、値段がいくら高くなってもいいと思ってはいない。工場も色々と探してロットの交渉をしたりしながら、なるべく安くするための工夫をしている。問題はそのバランス感覚だと思う」(マサヤ)

―ブランドを作ってから次の10年に入り、今後の展開への思いは?

「Kitsunéはメンズのイメージが強かったけれど、去年ニューヨークに進出してレディースの人気がとても高いことが分かった。それもあって今後はレディースにもっと力を入れていきたい。メンズは自分が着たいものを作るという感じだったが、何かをクリエーションするという意味ではレディースの方がやっていて楽しい気もするから」(マサヤ)

「ブランド全体としては、時代に対する気分や想いをきちんと考えて表現していきたい。自分たちはどこから来て、いまどこにいるのか、そしてどこに行こうとしているのか? 服や音楽だけでなくもっとジャンルを広げて、たとえばホテルとか映画とかもやってみたい。大事なのは、同じコンセプトでつながっている世界観にもとづく生活スタイルなのだと思う」(ジルダ)

■インタビューを終えて■
Kitsunéの長所は、いい意味で生意気ということだろう。二人とも若いのに、高品質へのこだわりとシンプルさが生み出す多彩で複雑な効果への眼をもっているからだ。そのことが店にあった商品からだけでもよくうかがえる。そんな生意気さをもった若者が多い日本では、彼らのクリエーションはよく理解されるだろうし、世代を超えて大人からも支持されると思う。ロアエックとは時間がずれてあまり話せなかったが、彼がプロデュースする音楽も同じタッチなのだろう。
 実はKitsunéの黒のポロシャツをだいぶ前にパリで手に入れて長く着ているのだが、「どこのブランドのですか?」とよく聞かれた。着心地もいいし、他の有名ブランドのポロシャツと比べても色落ちや型崩れがずっと少ない。去年に二人がアーティスティック・ディレクターに就任したプチバトー(PETIT BATEAU)の新作も楽しみだ。もう一つ、CAFÉ KITSUNÉの独自ブレンドのエスプレッソはなかなかの味だった。ちょっと立ち寄って一杯やるのにちょうどいい。【上間常正】(c)MODE PRESS

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