【2月15日 AFP】男女が厳しく隔離される超保守的な国として知られるサウジアラビアで、昔ながらの結婚仲介業を営む人々は今、インターネット上で花開きつつある結婚仲介サービスとの厳しい競争に直面している。

 マイクロブログのツイッター(Twitter)では、結婚相手を探すサウジの男女に向けたサービスを提供するアカウントが200以上ある他、同様のサービスを提供するオンラインフォーラムも数十個存在する。こうした状況に、結婚仲介業者らは怒り心頭だ。

 紅海沿岸の都市ジッダ(Jeddah)で長く結婚仲介業を営むウム・サミさんに言わせれば、こういったオンラインサービスの多くは「詐欺まがい」で、中には「組織化された売買春」と呼べるものすらある。「ソーシャルネットワークは私たちの仕事を台無しにしています。彼らが提供するものは全て仮想的。本名は使わないし、信用できません」

 ウム・サミさんのような結婚仲介人は、口コミで評判が広がることによって商売を繁盛させてきた。結婚年齢を迎えた男女の家族は、仲介人に写真や情報を渡し、仲介人はそれを持って歩いて相手探しをする。

 だがウム・サミさんによると、サウジアラビアにはさまざまな種類の結婚形態があるため、仲介人の仕事は簡単なものではない。伝統的な結婚の他、「ミシャー婚」のように西洋の慣習とは全く異なる婚姻形態もある。

 ミシャー婚は「訪問者の結婚」とも呼ばれ、男女は別々に暮らし、会いたい時に一緒に過ごす。性行為のために会う場合が多い。このミシャー婚はスンニ派イスラム大国のサウジアラビアでも容認されているが、この婚姻形態を選ぶカップルは、家族と仲介人の間のみの秘密として公表しない。

 サウジアラビアでは、婚外交渉が発覚した男女は石打ちやむち打ちの刑に処され、未婚の男女が2人きりで外食やデートをすれば逮捕される恐れがある。それに対してミシャー婚は「合法的な姦通」だとして、人権活動家や有識者らから非難を浴びている。

 一方、ネット上では、伝統的な婚姻やミシャー婚の仲介をうたうサービスがあふれている。ウェブサイト「khtabh.net」では、男女が自分たちの要望を投稿することができる。あるメッセージには「リヤド(Riyadh)でミシャー婚の相手急募。仲介人には大きな報酬」と書かれていた。利用者は現在の婚姻関係の有無、月収、学歴や、自分の人となりや容姿を説明する短い自己紹介文を書かなくてはいけない。

 別のサイトでは、結婚を望んでいるという男性が、「優しく、静かで、ユーモアのセンスがあり、ふくよかな」女性を探していると投稿している。またリヤド在住の自称23歳の女性は自己紹介文に「美形で盲目、色白。たばこを吸わない、ごく普通の男性との結婚を希望。一夫多妻でも、第1夫人に知らせてあれば可」と書いている。

 アムジャッド・イスマエルさん(20)は「興味を引かれるメッセージはたくさんあるけど、友達から、中には『罠』のウェブサイトもあるから気を付けろと言われた」と語った。イスマエルさんによると、オンラインの結婚仲介サービスの多くは前金の支払いが必要だという。

 既婚者で第2夫人を探しているアブ・モハメドさん(40)は、過去にオンライン仲介サービスを利用した際、「苦い思い」をしたと語る。「(オンライン業者は)真面目に仕事をしない。連絡を取ってくる人々、特に既婚者をだまそうとする。秘密を守るために、昔ながらの結婚仲介人のところに戻ることに決めた」

 だがそれでも、若い世代はソーシャルネットワークを利用した結婚相手探しを好む。社会学者のアブバクル・バクダル氏はその理由を「お互いを知る簡単な方法だから」と説明する。「昔の男女は、家族や隣人を通じてお互いのことを知っていった」が、今の若い世代は「家族の干渉から離れたところでの出会いを求め、より伝統にとらわれない方法」を求めているのだという。(c)AFP/Assaad Abboud