【2月13日AFP】スペインの首都マドリード(Madrid)郊外の乾燥した丘を、大量の黒い物体が占拠している──何年にもわたって投棄され、積み上げられた廃タイヤの山だ。この投棄タイヤが、近隣地区にとっては悪夢のような環境問題になっている。

「見た目のひどさは強烈だ。この黒々とした山のせいで、田園的な風景は完全に台無しだ」と、環境団体エコロジスト・イン・アクション(Ecologists in Action)の活動家、ビセンテ・ガルシア・デ・パレデス(Vicente Garcia de Paredes)氏は語る。「この地区は(本当は)景色が素晴らしいんだ。アンダルシア( Andalucia)地方へ高速道路で向かうドライバーたちはここの景色が記憶に焼き付くはずなのに」

 セセーニャ(Sesena)市のカルロス・ベラスケス(Carlos Velazquez)市長によると、タイヤの山はある企業がこの場所をリサイクル用の古タイヤの仮置き場にしたことがきっかけで、1990年代に積み上がり始めた。その後、何年もかけてタイヤの山は巨大化し、今や10ヘクタールほどの範囲に数百万個のタイヤが捨てられ、ウサギの住みかとなっている。警備員は柵の見張りをする1人だけだ。

 廃タイヤのサイズは様々で、大半は自動車のタイヤだが、トラックの大きなタイヤも捨てられている。まだ状態の良いタイヤもあれば、もう使えないようなタイヤもある。タイヤのくぼみには水がたまり悪臭を放っている。感染症を媒介する蚊がここで増殖するかもしれないと環境活動家らは懸念している。

■積み上がった廃タイヤの山

「このゴミの山は少しずつ積み上がった。その企業にはタイヤを無期限に放置する許可は与えられていなかったのだが、結果的にそうなってしまった」とベラスケス市長は語る。「タイヤは運ばれてくる一方で、ここから運び出されるタイヤはない。それで山は膨れ上がった。もし火災になれば、消火は非常に困難になるだろう」

 2003年にタイヤの投棄は違法化され、この廃棄場の所有企業は相次ぐ訴訟の末、最終的にこの場所を放棄した。裁判所は2010年、これらのタイヤが廃棄物であると認定し、市当局に撤去する義務があるとの判断を下した。

■撤去計画ようやく始動

 環境団体エコロジスト・イン・アクションでは、この山におよそ4万~6万トンのタイヤが投棄されていると見積もっている。「住民1万人の町からわずか500メートルしか離れていない距離に、危険なほど燃えやすい物質がある」とガルシア・デ・パレデス氏は指摘した。

 同氏が指さした先にあったのは、町はずれの丘に建てられた住宅地だ。1990年代末のスペイン建設バブルの際に住宅開発業者が建てたもので、数万人の購入者を見込んでいた。だがセセーニャは今やほぼゴーストタウン。2008年にはじけたバブル以降のスペインの景気後退を象徴する光景だ。

 ベラスケス市長によると、市当局はついに西アフリカのセネガルの企業と合意に達し、3年をかけてタイヤの山を崩し、リサイクルすることを決めた。このセネガルの企業が重機を使って廃タイヤを砕き、トラックで破片を運び出す計画だ。破片は道路のアスファルトや運動場のトラック、子どもの遊び場用などの建設資材として使われるという。タイヤの山は、3年以内になくなる見込みだ。(c)AFP/Sylvie GROULT